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ぼっちは辛いんだが?

 振り向くとそこには、もどきと走ってくる美沙がい――

 ん?

 走って?


「うはっ!!」


 美沙は勢いよく飛びついてきて、桃のようなほのかにいい香りが鼻を通る。

 美沙の力はそこまで強くないものの、身動きが取れなかった。

 なんか最近、酷い目にあってばかりだな。


「隆さん、探しまし――って、ええ!?この子は誰ですか!?」


 もどきは入ってきたと同時にこちらを見て目を丸くして驚いていた。

 ここは理由を説明せねば。

 だが、少女も美沙もいる状態でどう話す?

 副業のことは言えないし……


「いや、まあ色々あってだな……」


「ま、まさかお兄ちゃん、ついにロリコンに目覚めたの!?私というものがありながら……この、変態!!浮気者!!」


 美沙は泣きながら思いっきり、手を広げて挙げた。

 そしてそれがこちらに降ってく――

 え?


「ふげらっ!!ぶほっ!!痛い痛い!!美沙、やめろって!!ぶおっ!!」


 高速で思いっきり、何度もビンタをされる。

 さっきも言ったが、力は強くはない。

 ただ、今は鏡が見たくはない。

 顔が腫れまくってるだろうな〜。


「お兄さん、この人たちは?」


「お兄……さん……?私というものがありながら、妹まで作ってたの!?クズ!!クズ!!クズクズクズーーーー!!」


「ぶはっ!!」


 さらにビンタの速度を上げ、バシバシと叩きまくる。

 僕は美沙の腕を掴み、ビンタを止める。

 何をこいつは泣いているんだか。

 とりあえず、誤解を解くか。


「誤解だ!!こいつとは本当に何にもなくてだな!!あ、こいつらは幼なじみと……えっと……」


 もどきと美沙の誤解は解けたはいいが、この子にもどきのことはなんて伝えればいいんだ?

 妹?

 いや、今妹とか言ったら多分美沙に殺されるのはわかっているとして――


「セフレ?」


「違うわ!!」


 少女は首を傾げて言った。

 その仕草が拙者の心を掴まれかけたが、まあ、今のはノーカンノーカン。

 ていうか、こんなに幼い子が変なこと言うなよ。


「じゃあ、ガールフレンド?」


 ガールフレンド……だと……!?

 聞き捨てならん言葉を今、この女子(おなご)は言った。

 これは、拙者のガールフレンドはシャルロットたんだけということを証明せねば……!!


「はい!隆さん、私のことをガールフレンドどころか妻だと――」


「拙者のガールフレンドはシャルロットたんだけだあああ!!シャルロットたんとは永遠!永久!いや、運命的に結ばれる運命にある!こいつはな、ただの居候リアル女だ!!決してガールフレンドなどではなーーーい!!そもそもだな、僕とシャルロットたんが出会ったきっかけは……」


「まーた、始まったよ。お兄ちゃんのオタクトーク」


「じゃあ、私たちはここで失礼します。行きますよ、隆さん!!」


 そう、拙者はあの瞬間……

 あの最初のパーツを組み合わせてそれが完成した時に現れる決定ボタンを押した瞬間に、シャルロットたんと今後を歩んでいくと決意したんでござる。

『二度と変更はできません』。

 そう画面には表示された。

 だが、拙者に迷いはなかったでござる。


 拙者に迷いはなかった。

 これこそが、シャルロットたんとの運命を表す証なのではないかと考えたでござるね。


「あの、お兄さんたち!!」


「ん?」


 少女の声で我に帰る我。

 副業も達成したところだし、後は帰るだけなんだが。

 少女の方を振り向き、話しかける。


「明日も……来てくれる?」


 明日か。

 明日は特に予定はない。

 だがそれとは別に、僕にはある考えが浮かんでいた。


「いいぞ。明日も来てやる」


「ほんとぉ!?」


 少女の目は輝いていた。

 光っていないのに、キラキラとしたように見える目。

 そんなに嬉しかったのか?


「あぁ」


「あれ?隆さんが行くっていうなんて珍しいですね。てっきり、リアル女の看病なんて誰が行くか!っていうのかと」


「……」


 たしかにこいつはリアル女だ。

 それに、さっきの少女の言葉がなければ行こうとは思わなかった。

 そう……僕は放っておけなかったんだ。


「お前、なんとなくだが親は今近くにいないだろ」


「うん。お仕事で海外に行ってるよ。でも、なんで?」


「お前の性格や喋り方でわかっただけだ。周りに話し相手がいないのはどれだけ辛いかは僕がよく知っている。だったら、誰かがそばにいてやるべきなんじゃないのか」


 現に僕はもどきや上条、美沙や天空城がいたからこそ、今の僕があるとも思いつつある。

 今まではシャルロットたんがそばにいてくれた。

 だけど、シャルロットたんはもういない。

 大切なものは失って初めて気づくことだってあるのだよ。

 それはシャルロットたんのことでもあるが、それ以上にみんなの存在が大きかったのかもしれない。


「……あ、もしかしてお兄さん、それ実体験?くすっ!」


「う、うるさいなあ!!帰るぞ、もどき、美沙!!」


 少女はくすりと笑い、病室を出る僕らの背中を見守った。

 顔を見なくてもわかる。

 少女は笑顔だった。


「またね、お兄さんたち」


 少女は最後に何か一言言った。

 なんて言ったんだ?

 まあ、なんでもいいか。



「ていうかお前ら、なんで僕の居場所がわかったんだ?」


「美沙さんが教えてくれたんですよ」


「匂いでわかりましたー!」


「お前は犬か!」

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