少女のお願いなんだが?
病室に入り、二人きりになる。
うわあ、めちゃ気まずいじゃんか。
「で、お兄さん誰?」
「君のお兄ちゃんさ」
いや、何言ってだ僕。
思わず、そんな言葉が出てしまう。
「あー、はいはい。それで、なんで私を病室に戻したの?」
少女は車椅子に乗っているため、僕を見上げるように話す。
この子、顔立ちはそれなりにいいな。
こほん。
上目遣いだと拙者の心がドキドキしてしまう可能性があるため、この女子と目線を合わせることにしよう。
僕は中腰になり、少女と目線を合わせて話すことにした。
「だって、看護師さんともめてただろ」
優しい声で、適当な理由をつけて答える。
こいつに投資ゲームのことは言えない。
言ったら、僕が殺される。
「嘘だね。お兄さん、何か隠してるでしょ」
「そ、そんなわけないじゃないか〜。あっははは……」
まさか、気づかれた?
いや、勘がいいだけのただの子供。
副業に気づくはずがない。
そういうと、少女の目は鋭くなり、ニヤリと笑った。
「例えば〜……誰かに命令されてここに連れてきた……とか?」
「なっ……!?」
その瞬間、手首が引きちぎられそうな痛み。
バングルは赤く光っていた。
「うおあああああああ!!」
僕はその場に膝をつき、その場に蹲り痛みに耐えた。
光は赤く光ったまま、止まろうとせず目すらも刺激する。
誤魔化せということか。
「お兄さん、大丈夫!?」
少女が心配をして声をかける。
「じゃ、邪神がああああ!!」
「あ、ただの厨二か」
右手を押さえている僕を見たのか、少女の一言により、赤い光はおさまった。
おそらく、投資家なのかバングルなのかは知らないが、他のやつに投資家ということがバレてはいけないということに触れたため、僕への警告だったのだろう。
死ぬかと思った……
「ま、まあ、連れてきたことは悪かったよ。代わりと言ってはなんだが、僕にできることがあればなんでもしてやるよ」
なんかこれじゃあ、僕が悪いみたいになってるじゃんか。
まあいい、少女よ!
この暇人になんでも命令するのだ!
買い出しでも食事の手伝いでもなんでもしてやるよ!!
「流星群が見たい!!」
「え?」
流星群が見たい。
少女の口から出た一言はその言葉だった。
「一年に一度流れる、流星群。今年は6月14日で、その流星群を私は一度でいいから見てみたいの!」
「そんなもん、ここの窓から見れるだろ」
ここの窓は普通に空が見える。
なら別にここからでも観れるはずだ。
それを僕に言う理由がわからない。
それに、14日って明後日じゃないか。
「ここじゃやだ。もっと、近いところで見たい!例えば、ここの屋上とか!」
「屋上ね……そんなの、一人で行けるだろ」
「それがね、先週からずっと看護師さんにお願いしてるけどダメって言ってるの」
だからさっき、言い争っていたのか。
でも、ダメなら仕方ないんじゃないのか。
「なんで?」
「そ、それは……その……」
少女は悲しそうな顔を浮かべる。
なんだ?
僕、まずいことでも言ったのか?
理由はなんであれ看護師がダメって言ってるならダメだろ。
「ダメだな。次の二年後まで待っとけ」
「それじゃダメなの!!今年のを見なきゃ……」
少女は感情的になり、再び悲しそうな顔を浮かべる。
さっきからなんなんだ、こいつ。
ん?
外からこちらに向かって足音が聞こえてきてくる。
気にかける間も無く、勢いよく扉が開かれた。




