言い忘れていたんだが?
あれからニ週間が経った。
学校はまだ休校のままだ。
そして、この僕東條隆は今、部屋で黙々とスマホ版ラジカルファンタジーをやっていた。
なんでパソコンでやらないかって?
それは以前、どこかのもどきさんがパソコンを壊したせいでパソコンでロジカルファンタジーができなくなったんだよ!
だから仕方なく、スマホ版でやっているという訳でござるよ!
ぷんぷん!!
だが、相変わらずロジカルファンタジーにはシャルロットたんが映ることはなく、透明のアバターを操作していた。
「はぁ……愛しのシャルロットたんはいつになったら戻ってくるのやら……」
やっぱり、シャルロットたんは本当に殺されたのか?
殺したとしたら、あの鉦蓄どもが殺したのか?
許せん……
許すまじ……!!
そして投資。
投資をすれば彼女らを元に戻すことができるのだろう。
シャルロットたん……天空城……シャルロットたん……シャルロットたん……シャルロットたん……
僕の頭の中は相変わらず、シャルロットたんでいっぱいだった。
まあ、夫として妻のことを考えるのは当然のことだからな!
投資をするにはまず、定期的に行われる副業をこなさなければならない。
だが、本当に副業を1つも欠かさずにこなすことができるのか?
できなければ、待っているのは死……
「いや、この東條隆がシャルロットたんを救うナイトとなるのだよ!!その物語が今……幕を開ける……ムヒッ!ムヒヒヒヒヒヒッ!!ムーッヒヒヒヒヒ――」
「隆!!何一人で騒いでるの!!近所迷惑でしょうが!!」
気合を入れているところを母さんに邪魔された。
ていうか母さんともどき、買い物行ったのでは?
もう戻ってきたのかよ。
「うるせえぞ、クソババア!!僕とシャルロットたんの投資で紡ぐ愛のラブストーリーを――痛ててててててて!!うおーーーーー!!」
「隆さん!?」
その瞬間、手首にちぎれそうな痛みが走る。
バングルは赤く光っていた。
階段の下からはもどきの声を聞こえる。
「隆!!あんたいい加減にしないと東京湾に沈めるわよ!!少しは買い物に手伝ってくれたシャルロットちゃんを見習いなさい!!」
「へっ!!どうせそこにいるもどきも母さんの株を上げるためにやってる演技にしかすぎませんよーだ!!ちなみにそいつ、お金を食べて――死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」
もはや、手に感覚は無くなっていた。
激しい痛みが腕から手へと駆け巡る。
腕を見ると、肌の色が青ざめていて明らかにおかしかった。
「隆!!――って、シャルロットちゃん!?」
階段を登る音が聞こえる。
扉が開くと、そこにはもどきがいた。
「大丈夫ですか、隆さん!?」
「これが大丈夫に見えるかあああ!!」
あれ……
今、手首から変な音が聞こえたな……
まるで、血管が切れるような……
「ぎゃああああああああ!!」
「だから前に言ったじゃないですか!隆さんの投資は関係者以外には口外してはいけないって!」
「なにそれ、初耳!?」
今までのバングルによる手首の痛みは、僕が投資のことに関して他のやつらに口外していたからなのか。
ていうか、手首の血管が圧縮されすぎて、手が麻痺しているんだが。
「あれ?言いませんでしたっけ?」
「言ってねえよ!そんな大事なことはもっと早く言えよ!!」
「私としたことが、うっかりしてました。てへっ!!」
「はぁ……」
もどきは自分の頭を拳を作って軽く叩いた。
呆れて何も言い返せなかった。
まあ、行為ではなく忘れていたなら仕方がないか。
痛みはまだ完全には治っていないが、さっきよりかは少し引いてきた。
とはいえ、死にかけたのは事実。
今後は気をつけて欲しいものだな。
「それで、関係者って誰のことだ?」
関係者には口外してもいいと言っていた。
それを把握していれば、そいつらには投資のことを話せるということになる。
「私が知る限りでは、私と投資業界トップの人たちですね」
「よりによってポンコツと天敵どもかよ」
「あの、隆さん? そのポンコツって私のことを言ってません? 私、魔法こそこの世界ではなぜか使えないものの、パラメータは最強クラスですよ」
とはいえ、口外できるのがもどきと投資業界トップの連中となってくると、頼れるのはもどきしかいない。
投資業界は悪。
僕や天空城、もどきを危険な目に合わせたうえ、シャルロットたんを殺した。
そんなやつらを頼ることなんてできない。
第一、この腕に巻かれたバングルを操っているのがそいつらだからな。
「あのー、隆さん? 無視ですか……」
「もどき!!」
「は、はい!?」
もどきの名前を勢いよく呼ぶ。
僕の中である決心がついたからだ。
これで、みんなが救われるのなら……僕は戦うさ。
「今から僕のもつ全財産を、お前に投資する!」




