一線を超えてしまうんだが?
「あれ?ここは……どこだ……?」
あたりを見渡すと、ロイヤルホテルのような、豪華な部屋にいた。
赤いカーペットに、綺麗なシャンデリア。
部屋は少々、暗めでどこかエロスな雰囲気を醸し出していた。
僕は今、寝転がっているのか?
だが体を起こすが、手が鎖で繋がれていた。
「なんだこれ!?」
鎖は鉄でできており、力ずくじゃ外れなかった。
外そうと何度も試みたが、ダメだ。
しばらくすると、部屋の奥から足音が聞こえてくる。
コツコツと床を踏む音。
誰かが近づいてくる?
恐怖はある。
僕は今から殺されるのではないか。
実験台にされるのではないか。
そんな不安が募るばかりだ。
だが、最後に犯人の顔でも見ておかないと。
誰だよ、こんなことする奴は!
僕は顔を上げ、声のする方向を向き、犯人の顔を見ることにした。
「誰だ、僕にこんな真似するや――」
「隆!目が覚めたんだね!」
「てめえかよ!?」
そこにはなぜか、制服姿の青色の髪の男、上条がいた。
こいつがこんなところに連れてきた挙句、僕を縛りやがったのか!
「隆。会いたかったよ」
そう言うと、上条はこちらに近づいてきた。
そして靴を脱ぎ、ベッドの上に登ってきた。
僕の足を跨ぎ、膝をついて立つ。
「おい、お前何してんだよ!お前が縛ったのか!いいからこの鎖を外――って、何してんだよ!!」
上条はブレザーのボタンを外し始めた。
白色のシャツがあらわになり、健康的な体がシャツ越しからでもわかる。
「隆……僕と一線を越えよう……」
何を言い出すかと思えば、訳のわからないことを言い出し始めた。
前から察してはいたが、とうとうこいつ、あっち系に目覚めたのか?
いや、そんなことを考えている場合ではない!
この場をなんとかしなくては……!
「やめろ!!僕は30歳まで童貞のまま、魔法使いになるんだ!!まあ、拙者は一線を超えるとしてもシャルロットたんとしか超えない――」
「僕じゃ……ダメかな……」
上条は涙目で僕に訴えかける。
別に僕はこいつとはこれからも関わってもいいかなとは思っている。
だが、それ以上の関係にはなりたいとは思わない。
だから上条、お前の気持ちには答えられない。
「悪い上条、それはでき――」
「答えはイエスだね!!オーケー隆!!」
「僕の話聞いてた!?」
上条は四つん這いになりながらこちらにゆっくりと近づいてくる。
まずい!
こいつ、正気じゃねえ!!
「あ、あの〜……上条くん……?」
「大丈夫だよ、隆!!僕がリードしてあげるからさあ!!」
僕の声も届かず、上条の目を見ると焦点が合っていなかった。
ついには、僕の胸元の上まで上条は来ていた。
「やめろ……!やめろーーーーー!!」
「さあ……!!さあさあさあさあさあさあ……!!」
上条の手が僕の着ていた病衣の中に手がもうすぐで入りそうだ。
こんなところ、シャルロットたんに見られたら旦那である僕が浮気したと思われて、関係が壊れてしまうかもしれない!!
こうなったら……!!
「やめろって……言ってんだろうがーーー!!」
僕は思いっきり太ももを上げた。
この手だけは使いたくなかったが、仕方がない!!
「うはっ……!!」
その膝が上条の急所にクリティカルヒット!
上条は今にも死にそうな顔をして、その場で力尽きた。
「って……あれ?夢……?」
周りを見ても、さっきのホテルのような雰囲気はなく、前までいた病室だった。
「なんだ……夢……か……」
ホッと一息つき、体を起こす。
さっきの鎖のようなものも、ただ僕が夢で見ただけのものだったようだ。
あれ?
なんか、体が重いな。
膝の辺りが何か重いように感じた。
恐る恐る、下を見る。
「最後に……童貞……捨てたかっ……た……」
そこには、訳のわからんことをぶつぶつ言っている上条が倒れ込んでいた。
もう、何が現実で何が夢かわからなくなってきたな。
とりあえず、こいつは気絶している。
あと数分後には目を覚ますだろうから、それまで寝かせておいてやるか。




