終わりは始まりの合図なんだが?
その黒い手は腕から胴体へと段々濃くなり、正体を現した。
顔を見ると、黒いヒゲを生やしてチリヂリの髪をした50代ぐらいの男だった。
服装はさっきの男と同じ、黒色のマントのような服装で、真ん中には紋章が描かれていた。
「ふんっ!!」
男は僕の腕を掴んでいた方の手を離すと同時に、もう片方の手で僕に触れずに僕の身体を吹き飛ばした。
「ぐわああ!!」
3メートルほど突き飛ばされ、アスファルトの床に叩きつけられ、痛みが走る。
「隆さん!!」
すぐさま、もどきが僕の方へ駆けつけてきて、倒れていた僕の身体を起こす。
幸い、頭を打ったわけでもなく、身体を擦っただけで軽傷で済んだ。
僕は突然やってきた男を睨みつける。
「龕您か…」
龕您…
男はそう言った。
こいつの仲間か。
だとしたらこいつも敵だ。
「誰の許可を得てここに来た?どれだけ被害が出てると思ってる」
冷静に男に何かを言っていた。
「ちっ」
それに対して男は不機嫌そうにしていた。
だが、僕の怒りはまだ収まらなかった。
「邪魔をするな。僕はそいつを殺す」
僕はもどきの手を振り払い、落としたボールペンを再び手に持ち、立ち上がった。
「一様、私もこいつの上司でな。こいつを守る義務があるのだよ」
「ふざけるな!僕らはこいつに殺されかけたんだぞ!かばう気なら、お前も殺す!」
相手が年上だろうが関係なかった。
僕の指には力が入り、ボールペンが壊れそうだった。
「君を傷つけたくない。こいつにはそれなりの罰は与える。ここは私の顔に免じてこの場で許してくれんか」
「くっ…」
僕はなぜだが、それ以上何も言えなかった。
手の力がだんだんと緩まる。
「君たちには申し訳ないことをしたな。特に、彼女には」
彼女?
彼女というのはもどきではない。
だとしたら…!?
僕は男の視線の先を向いた。
「あ…」
「…ッ!?」
そこには、変わり果てた天空城の身体があった。
全身、真っ黒に焦げ、呼吸をしていなかった。
「う、うええ…!うええ…!」
僕はもっていたボールペンを落とした。
胃から登ってくる異物に耐えきれず、その場で吐いた。
僕は…
何を見ているんだ…
「天空城さん!!」
僕が吐いている中、もどきが天空城に駆け寄った。
だが、返事はなかった。
「天空城さん!!天空城さん!!しっかりしてください!!天空城さん!!」
もどきは何度も天空城の身体を揺さぶった。
何度も…
何度も…
何度も…
何度も…
「僕は…どうすればいいんだ…」
ただ吐くことしかできない自分が情けなかった。
いや、僕にはできることが一つあった。
こいつらを、殺してやる…!!
「投資をし続けるんだ」
「・・・ッ!?」
男は投資をし続けろと言った。
投資…
僕が放棄していたことだ。
シャルロットたんもそうだ。
だが、今は天空城を助けたい気持ちでいっぱいだった。
「私たちには彼女を救うことはできない。だが、投資の力があれば、彼女を救うことができるはずだ。彼女を救うか否かは君が決めることだ」
こいつの言い方からして、天空城はまだ生きている。
投資をすれば、天空城は助かる。
ならやってやる、投資を!
外からはパトカーや救急車の音が聞こえてきた。
「それでは、我々はインベストに戻るとしようか。行くぞ、鉦蓄」
そう言うと、男の後ろから魔方陣のようなものが浮かび上がり、2人は闇に包まれていった。
「おい、待――」
僕は男たちに手を伸ばしたが、それと同時に、僕の意識は飛んでいった。
最後に覚えているのは、男たちがいつのまにか消えていたこと。
そして、僕はやっと自覚した。
――これはもう、平穏な日常ではないことを。




