終わったんだが?
男が倒れると同時に、地面の揺れは収まり、もどきの腕に巻かれた炎は消えていった。
身体の熱はひいたため、立ち上がることができた。
「隆さん…!」
もどきは泣きながらこちらに走ってきた。
僕は彼女の身体を強く抱きしめる。
「怖かった…!怖かったです…!!」
もどきの顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
僕はこいつを守ったんだ…
「もう大丈夫だ。怖い思いをさせて悪かったな」
すると、いつものようにポケットから振動が鳴る。
副業達成か。
男を倒し、もどきも救った。
だが、今は副業なんてどうでもよかった。
もどきが無事だったことで一息つく。
「あああああ!!この弾は…あいつか…!どうしてあいつがこの世界に…!」
男はわけのわからないことをぶつぶつと言っていた。
男の腹には5センチほどの穴が空いており、腹からも口からも大量の血を吐いていた。
放っておけばこいつは死ぬだろう。
――だが、僕はこいつが許せなかった。
「おい」
僕は男の近くまで歩いて行く。
僕はどんな表情をしているのか。
そんな考えと同時に、ある考えが僕の脳裏に浮かんだ。
――今なら犯罪者になってもいいと。
「お前には僕たちを傷つけた罪を償ってもらう」
気がつくと僕はポケットにあるボールペンを取り出していた。
今から何をしようとしているのか。
そんな自覚は当然あった。
「最後に言い残すことは」
男を半眼で睨む。
今の僕は誰にも止められない。
とにかく、殺意だけがあった。
「やめろ…死にたくない…!!死にたくない…!!」
男の目には涙が流れていた。
命乞い。
さっきまで人を殺すと言っていたやつの最後の言葉がこれか。
――時間が惜しい。
早く済ませるか。
僕はボールペンを持っている手を挙げ、男に標準を定めた。
「ダメです!!隆さん!!」
後ろでもどきが叫ぶ。
こんなやつをかばう必要はない。
僕の手は止まらなかった。
「やめろーーーーー!!」
男はさらに泣き叫ぶ。
泣いたってもう遅い。
僕の手は、男のわずか10センチほどまで距離を縮めていた。
死ね!!
「…ッ!?」
なんだ…
身体が動かない…
金縛りに合ったかのように、身体が動かなくなった。
視線を腕の方に持って行くと、黒い手のようなものが僕を抑えていた。
「君が手を汚す必要はないのだよ。少年」




