勝ち目がないんだが?
「どういうことだ!!なぜお前は立てる!?」
天空城も状況が理解できていないみたいだ。
「砕かれた骨を炎で一時的に補ってんだよ…」
炎で補う?
聞いたことないぞ…
「さあ、今度はこっちの番だ!!うあああああぁ!!」
男は構えを取り、叫び出すと、みるみるうちに炎が集まりだした。
男の身体は熱を持っていた。
周囲の床や壁は徐々に溶け始める。
「くっ…!!」
天空城の足は震えていた。
こいつは強い。
だが、こいつも普通のリアル女だ。
こいつにだって怖いものはある。
そして、男は手を広げ、天空城に向けた。
――僕に攻撃してきたように。
「獄炎…」
その瞬間、何かが僕の胸の中で疼いた。
これはさっきのとは違う。
――明確な殺意のあるものだった。
「天空城さん!!避けて!!」
もどきが必死に叫んだ。
――だが、もう遅かった。
地面がグラグラと揺れ、足場が崩れ始めた。
僕は足場が崩れただけだが、天空城の足場は溶け始めていた。
「なんだ!?何が起きて――きゃーーーーー!!」
次の瞬間、あっという間に、天空城は地面から現れた炎の渦に飲み込まれた。
「はっはーーー!!そこで炎に飲み込まれて死ね!!」
男は手を開かせながら、笑っていた。
こいつだけは…
こいつだけは…!!
「天空城さん!!」
「身体が…!!熱い…!!熱い…!!あああああ!!」
天空城の姿は見えないが、叫んでいることだけはわかった。
僕はもどきだけじゃない。
僕を救ってくれたこいつも救わないと――
「うおおおおお!!」
僕は男に向かって走りだした。
男の周囲はかなり熱を帯びていた。
だが、ここで止まるわけにはいかな――
あれ…
力が出な…
僕はその場で倒れた。
「おいおい!能力者を二人も殺しちまった俺すげえな!こりゃ、帰ったら楽しみだぜ!!」
おそらく、かなりの熱に耐えきれなくなり、熱中症みたいな症状が出たのだろう…
「あああああ!!」
だが、あの炎の中で天空城はもっと苦しんでる…
僕が…
僕が助けないと…
なんだ、今の光は!?
意識がなくなりかける中、青い光のようなものが僕の横を横切った。
そして、その青い光は男の方へ飛んでいった。
「がはっ…!!」
青い光は男の胸を貫いた。
男は胸を押さえて倒れ、男の口からは大量の血が出てきた。




