表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/284

もどきの危機なんだが?

「おいお前!もどきがどうした!?」


「もどき?」


「お前らがシャルロットって呼んでるやつだ!なんでお前らと一緒にいない!?」


 僕は自然と感情的になっていた。

 なんだか胸騒ぎがする。


「それが、私たちで校内を歩いていたら知らない男の人が現れて東條さんを連れて行ったの…私…怖くて…怖くて…」


 そいつの目からは涙が溢あふれていた。

 こいつらはもどきを置いて逃げてきたってことかよ!


「くそッ!!」


 僕は思いっきり机を叩いた。

 僕はこいつらと違ってある感情が湧いた。

 悲しみなんかじゃない。

 ――怒りだ。


「隆…」


「おい!シャルロットはどこにいるんだ!」


 一人の金髪のリアル女が立ち上がった。

 昇龍だ。


「…ッ!?」


 まさかこいつ――


「南館…」


「あーしが行ってやる!その男、殴らないと気が済まねえ!」


 昇龍は廊下に向かおうとした。

 こいつももどきのことを…


「ダメだ、昇龍!あっちは火の海だぞ!」


 教師は昇龍の腕を強く掴む。

 昇龍は身動きがまともに取れなくなった。


「離せ!あーしの大事なダチがいるんだよ!」


「東條のことは先生たちがなんとかする。お前らは非難するんだ」


 昇龍は腕を必死で離そうとする。

 ――そして、昇龍も涙を流した。


「お前らに何ができるんだよ!?」


 昇龍は泣きながら訴うったえかけた。


 急な火事。

 拐われたもどき。


 関連性がないとは思えない。


 放火犯がもどきを拐った?

 だとしたら何のために――


 次の瞬間、スマホが鳴り始めた。

 僕はそっとスマホを取り出す。


 誰だよこんな時に!


「誰から?」


 上条が僕に聞く。


「もどき!?」


 そこには、もどきと表示されていた。

 とにかく出ないと…!


「あぁ、もどきさんねえ…って、シャルロットちゃん!?早く出た方がいいよ!」


「言われなくても!」


 僕は応答ボタンを押した。


 頼む…!

 無事でいてくれ…!


「もどきか!?今どこに――」


 ――だが、通話に出たのはもどきではなく、別の声のやつだった。


「てめえが東條隆か!ちょっとツラ見せにこいよ!」


 それは、20代ぐらいの男の声だった。

 周りの連中は僕の電話相手が誰かを知り、一斉に静かになる。


「お前が誘拐犯か!もどきに手を出すな!」


 とっさに出た言葉がそれだった。

 その言葉には怒りが混じっていた。


「もどき?あぁ、こいつのことか!手を出してねえかと言われたら嘘になるな!」


「てめえ――」


「まあ落ち着けよ。今変わってやるからさ」


 そういうと通話が静かになった。

 切れてはいない。

 本当にもどきは無事なのだろうか…


「隆さん!」


 通話越しにもどきが出た。


 とりあえず、情報を聞き出すしか…!


「もどきか!無事か!?」


「大丈夫です!ただ、手首が熱いです!」


 手首が熱い?

 どういうことだ?


「何が起きている!?」


「私もなぜ熱いかがわかりません!ただ、手首だけが熱いんです!」


 聞いているうちにますますわからなくなる。


 他の情報を聞き出そう…!


「今どこにいる!?」


「二階南館の奥です!」


 もどきは今にも泣きそうな声で言った。


 二階南館の奥って――


「火元じゃないか!待ってろ!今助けに行く!」


 僕の口からは自然と助けに行くという言葉が出た。

 誘拐犯がいようが火元だろうが僕には関係なかった。


「あの…助けに…来てくれるんですか?」


「お前を助けないとシャルロットたんに合わせる顔がないんだよ!」


 適当な言い訳。

 そんなことはわかってる。

 でも、あいつがいなきゃ…!


「隆さん…」


「おーおーかっこいいね〜!」


 もどきの声は聞こえなくなり、誘拐犯に変わった。

 挑発した発言。

 完全に舐められている。


「ふざけるな!」


「おっと、自己紹介がまだだったな!俺の名前は鉦蓄!投資業界トップ4の男だ!言っておくが、お前なんか俺の能力で簡単に消し炭にできるんだぜ!」


「…ッ!?」


 その瞬間、僕は氷漬けにされたように固まった。


 まただ…

 また…身体が動かない…


「待ってるぜ…ぶっ殺してやるよ…!!」


 その会話を最後に、通話は切れた。


 殺される…!!


 死にたくない…!!


「あぁーーーーーッ!!」


 恐怖のあまり教室の扉まで走って行き、廊下へ飛び出した。


「隆!?」


「おい、東條!!」


 教室からは数人の声が聞こえ、上条と教師の声が聞こえた。


 ――逃げなきゃ…


 あいつは僕を狙ってる。


 僕を殺すと言った。


 きっと、誘拐犯はもどきを餌にして僕をおびき寄せるつもりなんだ。


 僕は自分の命か人の命かと言ったら自分の命を選ぶ人間だ。

 そんなの誰だってそうだろう。

 自分の命がかかっていて、なおかつ勝機のない戦いに挑む馬鹿はこの世にはいない。


 でも、僕にはこれしかなかった…

 だから逃げるしかないんだ。


 ごめん…


 もどき…


 お前を救えなくて…


 きっと僕は後悔するだろう。

 もどきを助けなかったことを。

 だけど僕は、その後悔を一生背負って生きた方がマシなんだよ…!!


 僕はひたすら走り出した。

 校舎の外に出るために…

 あいつから逃げるために…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ