みんなパニックなんだが?
「しっかし、ここの校長先生は変わってるよね〜。まさか、あんなにもあっさりと僕らを解放してくれるとは」
「それも覗きはロマンだとかお前と同じこと言ってたしな」
昨日呼ばれた時に校長はこう言った。
覗きは男なら誰でもしたくなるもの。
だから次はバレずにするんだぞと。
うちの学校大丈夫かよ。
「校長先生わかってる〜。やっぱりわかる男は違うな」
「もう二度と覗こうとするなよ」
一番可哀想なのは何だかんだで教師たちかもな。
あのAゾーンで遭遇した教師3人。
彼らは不可抗力が認められず、生徒たちに手をあげたということで厳しく罰せられたらしい。
まあ、リアルのことなんて知ったことではないから気にしないでおこう。
「え?それ、覗いた隆が言う?」
「何でもいいだろ。覗きは本当は良くないからな」
どうせこいつに副業のことを言っても理解しないだろう。
だったら、適当に正論を並べておけばいい。
「どうしちゃったの隆!?あんなにも覗きたいとかロマンを語り合ってたじゃん!?」
上条は目を大きく開かせて驚いた。
まためんどくさいことに…
「僕は元々こういうやつだ。リアル女なんて興味はない。ていうか、何気安く呼び捨てで呼んでんだよ」
「いいじゃん、戦場を駆け巡った仲だろ!隆」
まあいいか。
別に僕は呼び捨てとかそこまで気にする人じゃないし。
そうこう話しているとチャイムが鳴った。
こいつのせいで僕の余暇を潰してしまったな。
僕たちは席に座り始めた。
他のやつらも席に座る。
しばらくしたら教師も来た。
だが、数名いなかった。
ぱっと見4、5人ってところか。
その中にはもどきもいた。
他の奴らは知らんが、少なくとももどきは朝見た。
他の奴らが休んでたとしても、もどきがいない理由がつかない。
変なところに巻き込まれてなきゃいいが…
「シャルロットちゃん遅いね」
隣に座っている上条が口を開く。
こいつはあいつのことを心配しているのか?
「知らん」
そっけない対応で返す。
ていうか、僕は何でこいつと絡んでるんだよ。
「またまた〜。本当はシャルロットちゃんのこと大好きなくせに」
「それはない」
別にあいつのことが好きなんてことはない。
むしろ、あいつが来てから変なことに巻き込まれてばかりだ。
だが、不思議と出会わなくてよかったとかは思わない。
どうしてだろうな…
「え?何この音?」
外から突然警報のような音が聞こえる。
それもものすごい音だ。
中には耳を塞ぐものもいる。
「火事とかの時に鳴るあれだろ」
「避難訓練とか?」
確か1年前の避難訓練で同じ音を聞いたことがある。
だが、これは何か違った。
周りの連中も周りを見渡していた。
「避難訓練なら事前に何かあるだろ」
例えば、昨日のうちに知らせるとか。
行事予定表に書いてあるとか。
行事予定表に関してはどうでもいいから見てないが。
「じゃあ、どこか燃えてるの?」
「多分な」
きっと、本当の火事なんだろう。
そのうち避難の呼びかけが来るだろう。
「やばい、落ち着きすぎてパンツ濡れちゃうんだけど」
「めちゃびびってるじゃねえか」
上条の身体は演技かどうわからないが震えていた。
こいつにも怖いものがあるんだな。
「じゃあ隆はなんでそんなに冷静なんだよ!?」
「僕だって死にたくないぞ。どうせこんなのは世の断りがなんとかしてくれるさ」
流石にニュースみたいに大型の火事になったりしないだろ。
きっとそのうち治る。
もしそうだとしても、僕は生き残る素質がある。
――そう思っていた。
「火事です!火事です!2階南館廊下奥にて火災が発生しました!教員は生徒たちを外へ誘導し、生徒は教員の指示に従い、速やかに避難してください!繰り返します――」
クラスのスピーカーから教師の声が響き渡る。
そのスピーカーでクラス中がパニックになる。
2階ってここじゃんか。
だが、ここは北館。
南館は北館に繋がる通路を移動した先だ。
「どうしよう!どうしよう!僕死にたくないよ!」
ていうか、一番パニックになっているのはなぜか上条だった。
「少しは落ち着け。教師の指示に従えば大丈夫――」
「先生!助けてください!」
扉が開き、何人かのリアル女が入ってきた。
その中には朝もどきを呼んでいたやつがいた。
「どうしたの?」
教師が助けを求めたリアル女に聞き返す。
「東條さんが変な男に――」
東條さん!?
僕は立ち上がり、そいつの方を向いた。




