案外他の奴が心配なんだが?
僕は黙ってクラスに入る。
その後ろにはもどきがちょこちょことついてくる。
相変わらず、うるさいクラスだな。
「ほんと、男子たち信じれないよね!」
「覗きたいって神経がマジ理解不能」
リアル女たちの話題は昨日のことで持ちきりのようだった。
通りたくもないリアル女の横を通る。
もちろん、視線は冷たかった。
だが、リアル女の視線なんてこれっぽっちも痛くない。
全てはシャルロットたんのためだからな。
「おはよー!おはよ〜!おはよう!」
リアル女たちに負けないぐらいの声で笑顔で挨拶を振りまく馬鹿がいた。
「隆ー!シャルロットちゃーん!おはよう!!」
上条だ。
自分の席に着くや否や、僕たちにまで挨拶をし出した。
「おはようございます。上条さん」
もどきも挨拶をする。
僕は挨拶に意味があるとは思わない。
挨拶をして僕に利益があるわけではないからな。
喋るだけ二酸化炭素が増えると思えば、僕の方が正しい。
「…」
「隆?」
「お前、死んでなかったんだな」
なぜか自然とそんな言葉が口から出た。
なんでだろうな。
「酷!?」
「いや、だってあれだけ昇龍の脚を舐め回してたからてっきりボコボコに殴られて死んだのかと思ったわ」
もっとも、僕が言えることでもなく、僕も天空城に首を痛めつけられたんだがな。
「いやいや!そのあと安否確認がてら校長室に楽園計画に参加した男子全員呼ばれたじゃん!?僕、生きてたでしょ!?」
「あぁ、そういえば…」
覗きのことで頭がいっぱいで、あれから昨日のことはあまり覚えていなかったが、あのあと、男子全員は校長に呼ばれた。
とはいえ、意外なことを言われただけですぐに帰れたんだがな。
「お前、あれからリアル女どもにめっちゃ引かれたんじゃないか?」
なんてったって上条くん、昇龍さんの脚を舐め回していましてましたからね。
「全然」
「そんな馬鹿な」
昇龍は確かにリアル女どもにバラすと言っていた。
あの性格なら本当にやりかねないはずだ。
「昇龍さんは確かに女の子たちにバラしてたよ。でも、みんなそんなわけないーって言って流してたから」
「それは私も聞きました。不思議ですね。他の男子たちはみんな距離を置かれていましたのに」
もどきも話に入る。
こいつも言うなら本当だろう。
「イケメンってなんでも許されるんだな」
そんなことを呟きながら何気ない会話をする。
僕は心のどこかで感じていたのだろう。
今が一番楽しいと。
こんな日常がいつまでも続けばいいのに…
そう思っていた。
「シャルロットちゃーん!」
クラスの女子がこちらに手を振り、もどきを呼ぶ。
なぜか上条が手を振る。
「お前じゃねえよ」
もどきも手を振り返した。
「それでは隆さん、上条さん、また」
「おう」
「バイバーイ」
もどきは僕らに丁寧に一礼をし、扉の奥へと消えていった。
「…」
って、またこいつと二人かよ。
僕と上条だけがこの空間に取り残された。
「やっと…二人っきりになれたね…」
上条はなぜか顔を赤らめて言った。
「きめえよ!!」
―インベスト―
「はっはー!地上にいる東條隆っていう間抜けなやつを見たくなってきたな!龕您の許可は出てねえが、どうせ俺が地上に行くことは許可しねえだろ。待ってろよ、東條隆!俺がてめえをぶっ殺してやる…!!」




