犠牲者は増えるばかりなんだが?
「クソッ!!生き残ったのはこれだけかよ…」
僕は足を止め、壁を叩き、怒りをぶつけた。
教師たちは倒した。
倒せること自体は想定内だった。
だが、こんなにも犠牲が出るとは思わなかった。
「相手は大人。しかも、体育教師も混ざってりゃなおさらですからね」
生き残ったのは、僕とムキムキとそのほか3人の計5人だ。
とはいえ、負傷しているものもいる。
僕も例外ではない。
まだ、Bゾーンが残ってる。
本当に保健室にたどり着けるのか?
そんな言葉が頭によぎってしまう。
いや、弱気になっちゃいけないんだ。
シャルロットたんのためにも!
「行きましょう団長!まだ、俺がいます!」
「あぁ!!」
ムキムキの言葉を聞き、負傷した足を引きずりながら、僕らはエデンに向かって足を進めた。
「ここが、Bゾーン」
しばらく歩いていると、Bゾーンにたどり着いた。
一見すると、長い廊下。
50メートルはあるだろうか。
だが、そこを抜ければ保健室だ。
ゆっくりだが、目標に近づいている。
この調子でいけば、本当に行けるかもしれな――
「うはっ!!」
後ろで、バシッというものすごい音が鳴った。
――まるで、誰かが蹴られるような。
「武田!!」
ムキムキの声で振り向くと、仲間の男子生徒が倒れていた。
――そして、その女はいた。
「あんたたち、またくだらないことやってると思えば!!」
見覚えのある金髪。
乱れた制服。
「昇龍…妃…」
ムキムキの言った名前、昇龍妃。
なんでこいつがここに――
「教室に男子が誰もいないと思えば、覗きなんかしてるなんて、見損なったし、東條!!」
ま、まずい…
恐怖で足が動かなかった…
金縛りのように、足が締め付けられて動かなかった…
このまま僕は…
僕は…
「走れーーーーー!!」
「ッ!?」
ムキムキの言葉で目が覚め、脚の呪縛が解けた。
走るんだ、エデンへ!!
「うおーーーーー!!」
僕らは再び、保健室に向かって走り出した。
こんなところでやられるわけには…!!
「逃すか!!」
昇龍もものすごいスピードで追いかけてくる。
「うはっ!!」
また蹴りの音が聞こえた。
「がはっ!!」
その後に、倒れる音も聞こえ、足音も一人、また一人と消えていく。
僕は一瞬振り返ろうとした。
「団長!振り返ってはダメです!!」
それを、ムキムキは止めようとする。
消えていく仲間たち。
涙をこらえようとするが、こぼれ落ちているのが自分でもわかった。
ただ、ひたすら走ることしかできなかった。
僕は、どうすれば――
「ぐはっ!!」
「え…?」
僕は足を止め、後ろを確認する。
そこには、ムキムキが倒れていた。
「ムキムキ!!」
ムキムキは昇龍に強く何度も踏まれ、身体はボロボロだった。
「やめろ…!!やめろよ…!!」
「あんたが保健室に行くのをやめたらやめてあげる」
昇龍は不気味な笑みを浮かべ、何度も何度もムキムキを踏みつける。
「団…長…」
こいつだけは…
こいつだけは許さない…!!
僕はアクセルを踏み、昇龍にタックルをかました。
あの時とは違うんだ。
――僕は痩せたんだ!!
「うおーーーーー!!」
そして、何かがぶつかった感触がした。
当たった!
当たったんだ!!
「あぁっ!!」
昇龍と壁にぶつかる。
これでこいつはしばらくは立てないだろう。




