実行開始なんだが?
――そして、決行日の5月13日がやってきた。
やってやる…覗きを。
そして、何が何でも下着の匂いを嗅いでみせる!
「お前ら、全員無事に戻ってその目にエデンを焼き付けるぞーーー!!」
大声でその場にいたやつに活を入れる。
「おーーーーー!!」
僕の掛け声に合わせてほかの男子生徒もやる気十分のようだ。
「って、なんで上条はいねえんだよ!?」
そこには上条の姿はなかった。
僕の背中を押したくせになんで今日に限っていないんだよ。
「団長!上条副団長は熱でお休みのようです!」
近くにいた筋肉ムキムキの男が僕に言った。
「何してんだよあいつ…」
僕は頭を抱えた。
あいつまさか、一人で逃げたとかないだろうな。
集まったのは上条を除いたクラスの男子全員の生徒20人。
よくこんなにも上条は集められたよな。
まとめ役の上条がいなくなった今、現まとめ役は…
「って、団長?」
僕は自分を指差してムキムキ男に聞き返す。
さっき僕のことを団長とこいつは呼んだ。
団長は上条のはずだ。
そしてなぜあいつは副団長と呼ばれている?
ていうか、あいつなしでいけるのか?
「はい!上条団長は企画者の団長に団長の座を譲ると言っていました!」
何が企画者だよ。
あいつの方がよっぽど団長っぽいって話だ。
「話は聞きましたよ!なんでも、妹のシャルロットさんの裸が見たくて今回の計画を企画したと!」
「上条…さてはあいつか…」
僕は再び頭を抱えた。
まさかそこまで言いふらしてたとは…
というか、僕の目的は天空城だ。
あいつの下着の匂いを嗅がなければ死ぬんだからな。
僕は教師がいない教室を使い、黒板の前に立ち説明を始めた。
「これより、楽園計画の説明を始める。今回の目的はC組の女どもの裸を見ること」
C組には天空城がいるからな。
ついでに言っておくと、なぜかもどきもいる。
もどきの話によれば、A組の女の数は他クラスに比べて多いらしいから、効率を上げるために転校生であるもどきをC組と一緒に健康診断を行わせたというわけか。
「まず、僕らは今A組の女どもの着替えを待っていて、これから帰る準備をすると教師たちは思っている」
そして、A組というのは僕らのクラスだ。
周りを見ると、僕の話を聞くかのように男子生徒たちは皆頷いていた。
「その間を利用して作戦を実行に移す」
僕は少し口を休め、黒板の地図を描き始めた。
男子生徒たちはこちらを真剣に見つめる。
「今回、ゾーンは3つに分かれる」
黒板のチョークでそれぞれのゾーンを叩く。
「まずはAゾーン。偵察部隊によると、ここには3人の教師たちの関門が待ち受けている。おそらく、男子生徒の覗きを防止するためだろう」
その男子生徒は僕らなんだが。
そして、ここが一番脱落者が出るところだろう。
極力、後々の温存のために脱落者は出したくないが。
「次にBゾーン。ここはCゾーンに繋がってはいるが、長い廊下だ。何が起きるかはわからない」
とはいえ、Aゾーンが一番厄介であり、教師は他の健康診断に回っており、ここはそれほど警戒することはないだろう。
「そして最後にCゾーン。又の名を、エデン!A組の女どもが着替えを行なっている保健室だ!」
「うおーーーーー!!」
周りの男たちもテンションが上がる。
だが、僕はこれだけは忘れてはいけない。
――僕はこいつらを利用するということを。
「ここに来るのにどれだけの犠牲が出るかはわからない。だが、ここで覗かずして何が男だ!」
僕は正面を向き、語り始める。
上条の言葉を少し借りさせてもらった。
お前の思いも受け継いで見せるぞ。
「奴らは女!僕らが覗くことを期待しているんだ!だったら覗かないと失礼だろう!!」
やっべ。
もう自分で何が言いたいのかわからなくなってきた。
「だったら行こうぜ。エデンへ」
そして、イケボで決める。
「うおーーーーー!!」
「ついてくぜ、団長!!」
周りもやる気十分で助かる。
これならやれる。
「楽園計画の始まりだ!!」
僕らは扉に向かって歩き出す。
そう。
エデンに向かって。
――全てを利用して僕は生きる。
それが、どんな犠牲であろうと。




