リアルへの拒絶なんだが?
ーーある日の朝、僕は学校にいた。
もうすぐ3学期が終わるだろうという時期、僕はスマホを手に、休み時間を過ごしていた。
うちの学校は、休み時間にスマホを触ることを許されていたから、ロジカルファンタジーのイベント効率もよくなる……
――そう、思っていた。
「いやはやいやはや、ロジカルファンタジーは、PC版だけでなく、スマホで遊べるソーシャル版も出たのは嬉しい限りですな〜」
早速やってみたでござるが、モーションの動きも正常でラグやバグもなく、さすがはぷらねっと社が作っただけはあるな。
スマホでできるからイベント効率もよくなり、暇つぶしにも最適でござる。
まあ、もちろん、拙者はPC勢でござるがな。
「何あれ」
「一人でブツブツ言ってて気持ち悪いんですけど」
クラスにいる連中が、僕のことで何かを言っている。
外野がうるさいでござるな。
僕のことを言っているのは全員女。
というか、ババアども。
ちなみに拙者は、この世の女性は何歳だろうが、ババアと捉えている。
幼女だろうが、少女だろうがみんなババアだ。
まあ、無視だ無視。
スマホの画面に集中し、外の世界をシャットアウトさせる。
「うっひょひょーい! またシャルロットたんのレベルが上がったでござる! これは、シャルロットたんの可愛さもレベルアップしたということでござるね!」
ここまでレベルアップするのに、20分もかかったでござるよー。
RPGあるあるではござるが、レベルが上がるたびに思うことでござるが、次のレベルまでは上がりづらいでござるな!
え?
拙者は早い方だって?
ノンノン!
拙者はさらなる高みを目指さないといけない身、こんなところでつまずいていたらぷらねっと神に見せる顔がないでござるよ!
「おい」
「あ、今の拙者、少しかっこよかったでござるか!」
ちなみにぷらねっと神とは、拙者が作り出したぷらねっと社の神様であーる!
今日もぷらねっと神のご加護がありますように。
目を瞑り、ぷらねっと神に念仏を唱える。
「おい!」
「はぁ……! はぁ……! これでまた、シャルロットたんにふさわしい男にまた一歩近づけただろうか」
「聞いてんのか、キモオタ!」
「な、なんでござるか!? まさか、貴様! 拙者の邪魔をする気でござるか!? これだからリアル女は……!」
「いや、あんた、もう少し声抑えたほうが……」
僕に話しかけてきたのはクラス番長の昇龍妃。髪は金髪の長髪。爪にはネイルをし、胸元のシャツを開けている。いくら休み時間とはいえ、このような格好は良くないでござる……!
こーれーだからリアル女は……!!
「ま、まさか……! 拙者は今、心の声がダダ漏れだったでござるか……! これはこれは、失敬失敬!」
片手を立て、頭と一緒に下に下ろす。
いくら相手がリアル女とはいえ、迷惑をかけて謝罪するのが拙者の良きところ! ああ、こういうところがシャルロットたんやぷらねっと神に評価されるのでござるんだよなあ……!
「だから声がでけえんだよ、お前……! 周りの視線を見てみろ……!」
「ん?」
その声で周囲を見る。周囲には冷たい目線を送るリアル女の群れ。
なんだ、あのゴミを見る目は。
だがしかし! リアル女の視線なんざ拙者には無も同然! リアル女耐性というアビリティを付けた拙者にそのような技、効かぬでござるのだよ……!
「ねえキモオタくん、さっきからマジキモイんですけど〜」
「ね〜。あんなやつとおんなじ空気吸うとかマジありえないんですけど〜」
その言葉で僕は立ち上がった。
そして、ビシッとリアル女の群れに指を指す……!
「ふんっ……! 拙者の方こそ嫌でござるよ……! いつもいつも臭い香水を教室中にばら撒いて! 反吐が出るでござるわ……! 画面の中にいるシャルロットたんに貴様らの激臭が染み付いたらどう責任を取るつもりでござる……!?」
「はあ? あんた、うちらバカにしてんの? 妃、あんたボコっちゃいなよ、そいつ」
リアル女の群れは僕を指差し、睨みつけた。隣にはさっきの女番長、昇龍妃。
こいつに殴られたら、拙者終わるでござるよ……!
「あんたらもその辺にしとけって。東條、お前もあんな奴らに乗っちゃダメだ」
あれ? こいつ、拙者の味方?
まあいい。どうせリアル女だ。敵であることに変わりはない。
「妃がやんねえなら、あーしらがやってやんよ……!」
リアル女の群れが僕を取り囲む。
「はい! 没収〜!」
「貴様……! くそっ……! シャルロットたんを返せ……!」
そのうちの一人がスマホを奪い、シャルロットたんを人質に取る。くそ、下劣な……!
「なっ……!」
床に叩きつけられ、リアル女どもに踏まれる拙者。
許さない……許さない許さない許さない許さない……!!
「おらおらおら……!」
「どうしたんだよ! 反撃してみろよ!」
「反撃……でござるか……! だったら……お望み通り……貴様から潰してやるよ……!」
僕はムクムクと起き上がる。その間、誰もが踏むのをやめ、沈黙を続ける。
そして、「反撃してみろ」そう言ったリアル女の襟を掴み、容赦なく殴り、吹き飛ばした。
「拙者のことを馬鹿にするのは勝手だ。だがな……拙者の妻であり相棒であり分身であり恋人であり、ガールフレンドであるシャルロットたんへの侮辱行為は、万死に値するぞ、リアル女どもがあああああっ……!!」
怒りから湧き上がる力。憤怒の力で燃え上がり、拙者VSリアル女との白熱の戦いが始まった。
女は殴っちゃいけない? 確かにそうだ。だが、こいつらは女ではない……! リアル女だ……! それなら容赦をする必要は僕にはない。
そして、シャルロットたんを侮辱した罪に制裁をくだす。それが拙者の役目。
そして、数分後に立ち上がっていたのは拙者。周りには倒れ込んだリアル女たち。教師たちは拙者を取り押さえ、拙者は厳しく指導を受けた。
停学書を無理やり出され、暴力振るう生徒は我が校にはいらないと言われた。
それ以降、拙者はリアルをさらに拒絶。
それで僕は決意したんだ。
もう学校にはいかないと。
それから1ヶ月。二年生にはなったが、ずっと学校には行っておらず、明後日には留年確定の20日までに達する。
これでいいんだ、これで僕が休んだことによってみんな罪悪感を抱えて生きていけばいいんだ。
――いいんだ、これで。