協力者ができたんだが?
さて――
「ねえねえ!隆くん隆くん!」
しまった。
まだこいつが残っていたか。
「妹さん、もしかして覗きに来てもらいたいんじゃないかな?」
「は?」
上条は顎に手を当て、考え始めた。
何を言いだすんだこいつは。
「いやだってほら、さっきチャンスって言ってたじゃん。あれはきっと、君を誘ってるんだよ」
アホだこいつ。
何か大きな間違いをしている。
それに、僕の目的はもどきではなく天空城だ。
もどきなんざに興味はない。
「聞こえてたのかよ」
確か、もどきは僕だけに聞こえるように小さい声で言っていたが。
「まあ、僕耳いいから。で、どうするの?」
上条は顔を近づけて言った。
「何が?」
「覗きだよ、覗き!行くの!?行かないの!?」
上条は感情的になって言った。
「バカ!声でけえよ!ていうかお前、そんな性格だったのかよ」
僕は小さな声で注意した。
周りの視線が非常に痛い。
「当たり前だろう!女の裸に興味ない男なんていないのさ。そして、それを追求しないでどうする!?男に生まれたからには覗かないと!覗かずして何が男だよ!!」
上条の目には涙が浮かんでいた。
いや、意味わからん。
「なんでお前は泣いてんだよ。そして声でかい」
あぁ、わかった。
こいつバカだ。
変態だ。
「で、どうするの!?」
と思いきや、目を輝かしてまた顔を近づけてきた。
喜怒哀楽の激しいやつだな。
こいつに教えたところでメリットはない。
むしろ、女どもにバラされて僕の覗き計画は失敗に終わるリスクがある。
「それを言ってどうする?他のやつに言うのか?」
「男のロマンを言うわけないだろう。僕を信じろ」
僕は上条の目を見る。
青く透き通るような目。
その瞬間、こいつを信じてみたくなった。
いや、そんなのは違う。
僕はこの純粋な男が友情を裏切る人間の汚い部分が見たくなったのさ。
「わかった。僕は覗きに行く。実は、ある人の下着の匂いを嗅がなくては僕の欲が収まらないんだ」
小さな声で嘘を言い、上条にだけ教えた。
「ほうほう!お主も悪よの〜。で、お相手はやっぱり妹さん?」
「相手は天空城空だ」
もうここまできたなら引き返せない。
名前を言っても問題はないだろう。
「誰それ?そんなお空に浮かぶ城みたいな人いるわけないでしょ」
上条は呆れた顔をしていた。
いや、覗きの相手も名前も本当なんだが。
もしかして、上条は転校してきたばかりだから名前を知らないのか?
「隆くんは嘘が下手だな〜。どうせ妹さんってことはバレバレだって」
僕が誰を狙ってようがこいつの知ったことではない。
そういうことにしておいてやろう。
「とにかく、僕は覗く。止めたりバラしたりすれば容赦はしない。僕はこれに命をかけてるんだ。だから――」
「東條隆!よく言った!」
上条は大きな声で叫んだ。
その仁王だちはいらんと思うが。
「え?」
「僕は君の希望を見たいという心に感動したよ!よし、僕も手伝おう!」
裏切るどころか、手伝うとまで言い出した。
なぜか手も差し出し、握手を要求してきた。




