風紀委員の登場なんだが?
「いってて…」
ダイレクトにぶつけられた蹴り。
やばい、骨折れたかも。
どうしよう…
このままだと僕は一生歩けなくなって…
そして…
そして…
「芳月学園校則第11、廊下を走らない!」
突如頭上から声が聞こえた。
恐る恐る声のする方向を向くと、そこにはさっきぶつかったワッペンのついたロングヘアのキリッとしたリアル女がいた。
「な、な、な、な、な、なんだよ!ぶつかったくせに偉そうに…!」
今、心のどこかで動揺している自分がいるのがわかった。
こんなやつに怯むな…
所詮はリアル女…
そう、リアル女なんだ!
「ぶつかったのは貴様の方だろうが!!」
「ギャーーーーー!!」
情けない声を僕は出していた。
び、びびってなんかねえし…
「だいたい、廊下を走らないなんて小学生でもわかるぞ」
僕がびびっていることをいいことに、小馬鹿にするリアル女。
クソっ!舐めやがって…!
「わかったか、東條隆くん?」
あれ?こいつ今、僕の名前を?
「な、何で僕の名前を知ってるんだよ?」
こいつとは名前も教えたこともないし、面識もない。
だったらなぜ知っている?
僕はその場でそっと起き上がったり、リアル女のほうを向いた。
「風紀委員だからな。紹介が遅れたな。私の名前は天空城空だ」
彼女は胸に手を当て、自分の名前を言った。
天空城?
すごい名前だな。
まるで、某天空にある城って名前だな。
「君は学校内で有名だからな。何でも、1年の時に問題を起こして、2年生の新学期から19日間休んで留年しかけたとか」
「やめろよ…そのことは苦い思い出なんだよ…」
こいつ、人の思い出をよくもまあ平気で掘り下げられるな。
とはいえ、拙者の言う苦い思い出というのは、シャルロットたんを守れなかったことだがな。
「そうだったな。配慮が出来なくてすまなかった。これからは学校にきちんと来るんだぞ」
「…」
彼女は頭を下げて一礼をした。
言われなくてもそうせざるを得ない状況なんだよ!
「それにしても、随分と容姿が変わったものだな。見違えったぞ」
「よく言われる」
だが、こいつはさっきの連中たちとは違ってリアクションが薄くて助かる。
拙者、騒がしいのが少々苦手でな…
「とにかく、どんな理由であれ、廊下は走るなよ。人にぶつかったら危ないからな」
今度は教師のようなことを言い出した。
「はいはい。わかりましたよ――」
僕の声と重なるように、ポケットに入っていたスマホが鳴り出した。
このタイミング。
副業か?
だが、どうしてこんな時に…
「こら!東條隆!学校ではマナーモードにするのが基本だろう!」
確かに学校ではマナーモードにするのが基本だが、マナーモードにしたところでなぜか音がするんだよ。
いや、そんなことはどうでもいい。
内容を確認しないと。
ポケットからスマホを取り出す。
そして、ロック画面を見た瞬間、僕は凍りついた。
(1週間以内に天空城空の下着の匂いを嗅ぐ:2000円)
「…は?」




