表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/284

始まるみたいなんだが?

挿絵(By みてみん)


 カチカチと鳴り響くキーボードの音。

 暗闇の中、パソコンの光が目を刺激する。

 ここは拙者が作り出した理想郷、タカシアイランド。

 この部屋には拙者以外、誰一人として入ることを許さない!


「あぁ、そよ風が気持ち良いでござるな〜。おっと、そよ風ではなく冷房でござったか〜。これは失敬失敬!」


 部屋には拙者一人。

 画面には拙者の嫁、シャルロットたんがいる。


 シャルロットたんは、拙者が作り出した世界でただ一人のキャラクター。

 そしてこの(ロジカルファンタジー)の世界の住人。

 拙者の分身でもあり、そしてガールフレンドでもある女の子。

 それがシャルロットたんなのであーる!


 おっと、その前にここ(ロジカルファンタジー)について説明しないといけないでござったな!

 ロジカルファンタジーとは、今、世界で一番人気の本格オンライン育成RPGゲームであるのだ。

 プレイヤーは3000億通りもあるパーツから自分の思い描くキャラクターを作成できる。

 パラメータやコスチュームなどを組み合わせることだけでなく、ファンタジーの世界で仲間とともに敵を討伐に向かう熱き友情の物語もあるのだ。


「いやー、ポテチもコーラも最高でござるな〜」


 ボリボリとポテチを鷲掴みし、ガブガブと2000mlコーラを一気に飲み干す。

 塩のついた手をティッシュで拭き、再びキーボードを打つ。


 話を戻すが、実を言うと拙者はこのゲームのトップオブトップに君臨するプレイヤーなのだ。

 まあ、つまるところ1位というやつでござるね。


 ムヒヒッ。


 てっぺんの座というのは実に愉快でござる愉快でござる〜。

 ここまで(のぼ)り詰めたのも、絶え間ない課金と、ゲームは一日約24時間という流儀をこなしているおかげでござるな!


「ムヒヒッ!今日も今日とてシャルロットたんを育成しますぞーー」


「おにーちゃーん!」


 窓の外から聞き馴染みのある声が聞こえる。

 ちっ!美沙(みさ)か。リアル女が僕に喋りかけんなよ。


「おにーちゃーん!学校行こー!」


「……」


 こういう時は無視だ。

 幼馴染だかなんだか知らないが、毎日毎日しつこいんだよ。


「おにーちゃーん!」


 美沙は大声で外で叫び続ける。


 近所迷惑で通報されろ。


「隆ー。美沙ちゃん来たわよー」


「……」


 母親が僕の部屋の前まで来てどんどんと部屋の扉を叩き、拙者の名を呼ぶ。


 無視だ無視。


「おにーちゃーん!」


「隆ー」


「おにーちゃーん!」


「隆ー」


「おにーちゃーん!」


「たか――」


「うるせええ!!てめえら!僕とシャルロットたんの愛の育みを邪魔するなって何回言ったらわかるんだ!」


 流石に堪忍袋の尾が切れた。

 このやり取りを何度繰り返したことか。


 だが、これで奴らも治おさまるはずだ。


「……」


「……」


 ほらな。

 二人は黙り始めた。

 しばらくすると、母親が外へ出て、美沙に謝る声が聞こえた。

 それを、いい感じに返す美沙。


「この部屋も防音にしないとな」


 独り言を呟き、ため息をつく。

 毎日毎日、こんなことを言われたらノイローゼになりそうだ。


 学校――

 そんなものは知ったことではない。

 そう、あれは新学期が始まる前だっただろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] スラスラ読める内容で文字数もちょうど良かった! 話も面白く、主人公の口調も特徴的。 次の展開が気になるような作品に仕上がっている所がいいですね! [一言] 次の話からもぜひ読ませて…
[良い点] 初めて読みました。 こんな感じの始まりは読んだことないですが、面白いですね。 ((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ヨキヨキヨキヨキヨキヨキヨキヨキヨキヨキ 続きも読みます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ