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妄想力が豊かすぎるんだが?

 可憐は今、全裸。いや、服は着ている。エプロン。でもそれ以外は着ていない。手に持つものは包丁。切り刻まれていくニンジン。しかし、その手は決して早いとは言えない手捌き。羞恥心であまり切ることができない。


 ※ 加賀の妄想です


「こ、こんな格好で料理なんて……! は、恥ずかしいわ……!」


「なんでもするんだろ。ほら、手が止まってるぞ」


「み、見ないで……ください……ひゃあ! 鼻息が当たって……!」


「大丈夫大丈夫。リラックスして……」



 可憐の後ろにしゃがむ隆! 色欲まみれの鼻息も当たる! 優しい吐息で可憐な心を落ち着かせるが、それが逆に可憐をそそり立たせる……!




「ぐっ……! 東條隆……! 私にこんなことしてタダじゃ済まさないわよ……!」


 可憐は服を着ていない。首輪に繋がれ、犬のように歩いている。そのリードを持つのは隆。深夜の木々が生い茂る草原を歩き、人気はいないが、管理局局長である彼女を辱める!

 プライドを捨てさせ、奴隷となる!


 ※ 加賀の妄想です(2回目)


「なんだ可憐? ご主人様だろ……! ご主人様もうお許しをだろ……! 言ってみろ!」


「ご、ご主人様……お許しを……」


「んー? 聞こえねえなあー? ほら、もっと大きな声で! じゃないとどうなるか……わかるよな?」


 隆は可憐の顎を触り、脅しをかける。可憐は涙目で訴えるが、隆は声に出さないとそれを許さない。それが鬼畜、東條隆!!


「お、お許しを……ご主人様あああああ……!!」


 なんでもするとは確かに言った! しかし、まさかこんなことになるなんて想像もしていなかった! だが、後悔してももう遅い! それが、「なんでもする」という言葉の意味なのだから!




『ブシャアアアアアアア……!!』


「がはあっ……!!」


 加賀は大量の鼻血を吹き出し、派手に吹き飛んでいった。妄想して勝手に盛り上がっている。そのまま地面に倒れ、体がビクビクと動いてる。


「加賀あああああああっ……!!」


 赤城は加賀を抱き抱え、泣き叫んだ。

 なんだ、この茶番。



「お前ら三人も来ること。それが僕のひとつだけ何でもするの答えだ。それでいいか?」


「……」


 胸に手を当てながらキョロキョロしている。戸惑っていた。ターゲットである東條隆。その人物と遊びに?

 でも、何でもするって言ってしまったし……

 ごちゃごちゃの考え。何をどう答えれば良いのかわからなかった。でも、赤城と加賀も彼の友達と仲良くしてたし、それに私も少しは仲良くしてあげても良いかなーって……


 そう言い聞かせていた。


「いいんじゃないですか。行っても。私たち三人、その日は休暇じゃないですか」


 加賀を抱えた赤城がかわりに応える。たしかに三人とも休みではある。


「わ、私は可憐があんな格好になるのは部下としては反対……! でも、加賀としての答えはちょっと見てみたいかなっていう気持ちもあったりして……! いやあ、鼻血が止まりませんなあ……!!」


「あんたは何を言ってるの」


 起き上がり、ダラダラと鼻血を流す。もはや鼻血を拭こうともしていない。話の内容が全く食い違っている。


「そうね。じゃあ私たちも混ぜてもらおうかしら。あんたたちもそれでいい?」


「ええ、もちろんです」


「うん、いいよ。可憐そこ行きたがってたし、歳の近い九人で遊びに行くっていうのも若者らしくていいんじゃない?」


 加賀は鼻血をいつのまにか全て拭き、可憐の方を向いて優しい笑顔で言った。それは可憐を思う部下の言葉。加賀や赤城はまだしも、いつもあまりプライベートっぽいことをあまりしない可憐にとってはいい機会だと思い、一押ししたのだろう。


「加賀……」


(私は加賀がちゃんと話を聞いていたことに驚きなのです)


 心の中で呟く赤城。


「それと、お前ら私服でこい。武器はなしだぞ。ハンドガンもな。持ってきていいのは泊まりに必要なものだけ」


「え? でも、もしまたあいつらが襲ってきたら――」


「その時は僕がまた守ってやる」


 プライベートでは可憐に銃を持って欲しくない。プライベートは普通の女の子としての一面が見たい。そのようなことを隆は思ったのだ。

 それは隆だけではない。加賀も。赤城も。それ以外のみんなが思っていたことを隆が代弁したようにも聞こえた。

 可憐は一瞬顔を赤らめた。


「そ、そう……あ、あなたがそういうならそうしようかしら? じゃあ、四日の七時に私たちがあなたたちの家に一人ずつ向かいに行くわ」


「私たちの家?」


「可憐ちゃんわかるの?」


「ええ。管理局にかかればこの場の全員の家の場所を調べることなんて朝飯前よ」


「お前らなあ……」


 管理局には世界のあらゆる情報を得る権利がある。一人一人の住所を特定することなんて簡単なこと。

 政府公認局長様の可憐のやることなのだからプライバシーの侵害にはギリならないのだろう。

 そんな時、ふと上条が口を開く。


「じゃあ僕を迎いに来る時はここの学校に来てくれる?」


「そんなこと言わなくてもあなたの家まで向かいに行ってあげるわよ」


「いや、そうじゃなくて。僕の家、ここなんだよね」


 その言葉で全員が驚いていた。学校が家? どういうことだ?


「えええええ!? お前、それ、どういうことだよ!?」


 上条の家が学校!? ただでさえ異世界人だってのに!? こいつ、ほんと何者だよ!?


「詳しいことは今度話すよ。そういうことでよろしく頼むよ、可憐さん」


「え、ええ……わ、わかったわ……旅館の前は海辺があるみたいだから水着も忘れないように! 泳ぐわよ!」


「水着!?」


「あー、去年のやつまだ着れっかなあ」


 旅館の前は海辺があり、そこでは泳ぐことができる。だからみんなで泳ごうという案を可憐は出した。女性陣は買いに行こうか去年のやつを着ようか悩んでいた。隆もまた、考えていた。


(別の意味で僕は着れないから買いに行くか)


 去年の水着を着るとなると、当時隆は体重激太りしていたため、かなりのビッグサイズを着ることとなる。とはいえ、外へ出たくない引きこもりの隆は試着なしの通販でいいかという考えになる。


「こんなところかしら。他に何か言いたいことがある人はいる?」


 可憐の言葉に一同は顔を見合わせるが誰も反応しない。特に何もないようだ。


「お爺さん、送ってくれるのかしら?」


「やっと終わったか。じゃあ、送るからお前さんたち覚悟しとけい……ふんっ!」


 極兒は右手を前に出して震わせる。


「ねえ」


「ん?」


 そんな時、可憐が隆に照れ臭そうに声をかけた。顔も少し赤い。


「今日は私のこと守ってくれて……その……ありがと……正直、嬉しかったわ……」


「おう。今度遊びに行く時は楽しもうな!」


「うん!」


 とても無邪気な顔だった。初めて見た。あんなにもいい顔でギュッと笑う可憐な顔。その顔は隆にしか見えていない。いや、見せていない。

 今日の出来事で一番変われたのは他でもない可憐自信なのかもしれない。

 そんなことを隆は考えていた。


「はああああっ!!」


 右手に力を入れてそれを一堂に向ける。すると、下から丸い底の見えない暗闇の落とし穴が一堂の足元に広がる。


『うわあああああ!!』


『きゃあああああ!!』


 そのまま一同は落下していく。底の見えない暗黒なのだから恐怖はあったが、その先に待つものは元の場所への帰還と安眠。一瞬の恐怖でしかない。

 だが、隆だけがそれに落ちない。彼の地面には落とし穴がない。いや、極兒があえて作らなかった。

 隆と極兒が残る。


「おい! みんなをどこへやった!?」


「あやつらは元の場所へと返した。お主もいずれ返してやるが、わしからお主に言いたいことがあってだな」


「言いたいこと?」


 極兒は隆に向けて指を鳴らした。すると、みるみるうちに隆の体は軽くなる。その感覚に戸惑っていた。


「よく見たらお主、体の傷が完治していないようじゃったからの。ほれ」

 

 上条の治療は充電切れのため中途半端で終わっていたため、傷は完全には癒えてはいなかった。極兒はもともと傷を負った全員を治そうとしていたため、少しでも傷が残っていた隆を直さないわけにもいかない。


 ――それがあのお方の望みなのだから。


「わしが言いたいことはただ一つ」


 その言葉に戦慄を覚えた。


「我々投資業界のトップ六人。そして玄橆。本当の悪はどっちかな」


「何だそれ? それはどういう――うわっ!!」


 それを尋ねる前に足元には暗闇の穴が広がっていた。それは隆を飲み込み、現世へと誘う。


「じゃあまたどこかであったらよろしくのお〜。ほっほっほっほっほっ……!!」


 極兒の笑い声を最後に暗闇の入り口は閉じていった。暗闇にどんどん沈んでいく隆。周りを見ても一面真っ黒。本当に現世に帰れるのか心配だが、もうあの場所に戻ることはできない。


 最後の極兒のあの発言は何だったのか? それだけを言うために僕を最後に残した? じゃあ、それだけの価値のある言葉ということ?

 本当の悪って何なんだ……




 わからない……


 わからない……



 わから……な……い……

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