第68回投資議会
ここは、地上とは別次元にある投資家たちの世界、インベスト。
地上のあらゆる投資を管理し、地上を影で支えるためにある世界。
そこでは、年に数回投資の条例やルールを見直すために6人の投資家たちにより不定期で行われる会議がある。
それが、投資議会。
「これより、第68回投資議会を始める。一同、礼!」
投資業界トップ2の男、龕您。
投資業界と地上の投資を裏で操っていると言ってもいい。蘭壽とは心腹の友である。
「龕您、今回の議題は?」
投資業界トップ3の男、蘭壽。
何事も真面目に取り組み、周りからの信頼も厚い。龕您とは龕您ので心腹の友である。
「さっそくだが、過去廃止になったビットコインの件だが――」
龕您がその場にいる5人に問う。
そして、最初に反応したのは一人の少年だった。
「ねえねえー!なんでビットコインって廃止になったのー?」
投資業界トップ5の男、軌賀。
普段は天真爛漫で人の話を全く聞かないが、実力を出せば、仕事のスピードは投資業界の中ではダントツで早い。
「おい!そんなものも分からねえのか!」
軌賀の一言に1人の青年が席を立ち上がって胸ぐらを掴んだ。
「だって、君たちの話なんか聞いてないしー」
「舐めてんのかクソガキ!」
投資業界トップ4の男、鉦蓄。
非常に短期で周りからの信頼は一切ないが、こちらも仕事だけは完璧にこなしている。
「静粛に!ビットコインが廃止になった件だが、ビットコインの影響により、経済がうまく回らなくなったりしてな」
龕您の一言であたりは静かになり、鉦蓄も席に着いた。
「それに、ビットコインの影響で死者も出ているからな」
「はっはー!そんな間抜けがビットコインに手を出すから悪いんだろうがよお!」
「ふへへっ!今月買った月刊おかみさんも最高じゃあ!美佐子ちゃん…あぁ、美佐子ちゃん!!」
1人の男が雑誌を読み、声を上げた。
投資業界トップ6の男、極兒。仕事は毎回サボってばかりでいつクビになってもおかしくない。
いつも月刊おかみさんという本を持っている。
「…」
投資業界トップ1、篆。普段は無口で仮面をかぶっている。その姿は誰も見たことがない。仕事をしているところは誰も見たことはない。性別すらも鎧で纏われていて不明な存在。
「静粛に!とにかく、この件に関して異論はないな?」
龕您の問いに誰も反応しなかった。
「私からは以上だが、他に議題のあるものはいるか?」
蘭壽が手を挙げ、一同の視線が蘭壽に集まる。
「どうした?」
「我々がぷらねっと社と契約して、先程より投資家となった少年…えーっと、名前はなんだったか…?」
蘭壽は顎に手を当て考え始めた。
「東條隆くんだね」
極兒が代わりに答えた。
「そうそう、東條くん。先程お前たちも地上の様子を見ただろう」
「30分で約50キロ減量してたな」
鉦蓄も一旦冷静になり言った。
「私には彼が只者ではないと見た」
「まあ、ロジカルファンタジーランキング1位の猛者だからねえ」
「…」
東條隆。
ロジカルファンタジーランキング1位の猛者にして、シャルロットを操り数々の賞金モンスターを狩り尽くした、ロジカルファンタジーに疾風の您く現れた17歳の少年。
「とはいえ、彼の生きがいであるシャルロットを奪って、引きこもり生活を終わらせるのはちょっとかわいそうだと思うんだけどなあー」
「引きこもり生活を終わらせたのはメリットなんじゃねえのか」
「だがこれは、我々の判断と篆の決意があってのことだ。それに、彼にとってのメリットはある。ロジカルファンタジーの中のシャルロットを現実世界に具現化させたではないか」
具現化――それはつまり、ゲームの中のシャルロットを現実世界に移したということだろう。
「それを隆のやつはストーカーだと勘違いしてるみたいだがな」
「だが、これもぷらねっと社の協力があってのことだ。それに、彼の生活リズムもこれで整うだろう」