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銅をも打ち砕くんだが?

 二人は前は出る。銅像は顔だけを二人に向け、確認。


「次は二人か。いいだろう。どこからでもかかってこい」


 前は出たのはシャルロットと天空城。加賀の姿が見えない。かと言って後ろにいるのは残った四人。そちらにもいない。

 銅像は次の人数は二人だと思い、戦闘態勢を取る。

 その間、シャルロットと天空城は移動を始め、銅像を挟むように距離を取る。挟み撃ちだ。

 銅像はじっとして動かないため、天空城の方を向いている。


「はああああああっ!!」


 その瞬間、天空城は走り出した。合気道で鍛え上げられた脚を使い、回し蹴り。


「んんっ!? 速い……!」


 一発目はしゃがみ、回避をした。しかし、二発目はそうもいかない。


「天空落とし!」


 天空落とし。天空城の専用技。踵落としの上位互換。踵落としは脚に意識を集中させることによって三秒ほど滞空させてから相手に一撃を決めさせる技。武道を習っていない一般人では滞空させることすらやっと。

 天空城はそのさらに上をいく、滞空時間一秒未満で技を決めることができる。その秒数、わずかゼロコンマ七秒。それが天空落とし。


 銅像は横に転げ、ローリングをして回避。回避されたが、これで銅像は動いた。それだけでも大きかった。さらに回避という行為は攻撃を避けることはできるが、その分隙が多い。


「なにっ!?」


「はあああっ!!」


 ローリングが停止すると同時に、シャルロットの人影が浮かび、瞬時に拳を胸部に入れた。

 確実に命中した。銅でできた銅像の胸部からはメキメキとヒビが入る。銅をも打ち砕くその拳。これぞまさしく、物理攻撃9999(エンドレスナイン)


「ぐおっ!!」


 奇襲がくる可能性があるため、瞬時に銅像から身を離して後ろに飛び上がる。地面にも強く強打し、銅の粉末が煙となって巻き上がる。


「ヒビが入った……!? やったか……!?」


 銅像はそのまま倒れている。しかし、数十秒も待たずして身震いさせながら起き上がる。

 左手で肩を押さえ、首をゴリゴリと動かす。銅像からは聞こえるはずもない人間の骨のなるような音が鳴る。


「ふっ。面白い。少しは楽しませてくれるようだ。さあ、続きをするぞ」


「さすがに一発ではやられませんか。……行きますっ!!」


 二人は攻撃をまた仕掛ける。どちらかが攻撃し、逃げた先にもう片方が攻撃する。その繰り返し。二人ともとても素早い。

 しかし、銅像の回避も並大抵のものではない。

 天空城が右足で上段蹴りをし、回避したところを空中から拳を振り下ろすシャルロット。それすらも回避しようともなれば、天空城の正拳突きが腹部に入るが、それは広げた左拳で止められる。天空城と銅像との睨み合いが続く。

 その隙にシャルロットは中段蹴り。左拳は塞がっていて右手には本がある。だからこの攻撃は受けるはず。

 しかし、本を捨てて右拳を開いてシャルロットの足を止めた。

 左右で塞がれる攻撃。銅像も攻撃できないが、二人もまた攻撃できない。止まったまま。

 ――その時だった。


「ばいばあああああああいっ!!」


「……っ!?」


 ものすごい音が銅像から響き渡る。巨大な鐘を鳴らすような音。銅像は壁まで吹き飛んでいき、壁が凹む勢いで激突いた。

 シャルロットと天空城を止めていた銅の拳を離し、二人は解放された。


 その姿に隆たちは驚く。


 煙に見える三人の人影。シャルロットと天空城ということはわかる。そしてもう一人。


「管理局をあまり舐めるんじゃねえでっせ……」


 加賀だった。加賀は自分よりも何倍も重いロッカーを大工のように両手で持ち、それを振り回して銅像にぶつけた。最初からいなかったのは、チャンスを待っていた。下駄箱の物陰に隠れ、相手に気付かれないようにしていた。案の定加賀の存在に気付くことなく、二人を倒すのに集中していたのが仇となった。


 それでもまだ立ち上がる。しかし銅像の動きは明らかに鈍っていた。震えながら膝を突き、立ち上がる。


「奇襲か。やるな。流石の俺も少しこたえてやがった……」


 銅像の鎧の右側が剥がれ落ち、中が見える。加賀が攻撃をした場所。さらに顔面が大きく凹んでいる。その中は眩しいくらいに輝いている光。光る丸い何かがうねうねと動いている。


「よし、もう少しだ……!!」


「ここまで俺を追い込んだのはお前らが初めてだ。そしてお前らには悪いことをした。全力でこいと言っておきながら俺は全力ではないのだからな」


「……えっ!?」


 そういうと背中に背負っているまきの束を背負っているものごと全て落とす。そこから二本のまきを取り出して、両手に片方ずつ持ち、構えを取る。だが右手には本も持っていた。


「リミッター解除。今から俺は本気だ」


 それはまるで、バトル漫画にありそうな二刀流の剣士。ただ手に持つものがまきというだけ。

 さらに顔をよく見ると、恐ろしく目が尖っていた。その目で三人を睨みつける。

 もう拳が効くとかそういう領域ではない。その前に防がれ、やられる……!!


「行くぞ!!」


 天空城に狙いを定め、加速する。その速さはチーターやハヤブサなんてものではない。音速。音速の速さは秒速三百四十秒。先程の速さである、ハヤブサの約三コンマ一五秒。いつのまにか天空城の横を通り、数メートル先にいた。


「え……?」


「ここまで俺を追い込んだ敬意だ。ゆっくり休みな」


 その瞬間、眠ったかのように一瞬にして天空城は倒れる。どこも怪我をしていない。でも斬られた。その一瞬で天空城を眠りにつかせたのだ。


「天空城いいいいいいいっ……!!」


 さらにシャルロットを睨みつけ、加速する。


 その瞬間のことだった。激しく両方のまきを突き、シャルロットの周囲をつつき出す。何をしているのかが見ただけではわからない。一見全部当たっていないように見える。それは当たったかどうかもわからない刃だった。


「何ですか……これ……」


「もどきいいいいいいいっ……!!」


 そのままシャルロットは天空城と同じく、眠るように倒れた。

 なんだ? 何をしたんだ? 攻撃は一発も当たっていない。さらには斬った感じもしなかった。それなのにやられた。なんなんだ、これは……


 銅像は足元に落ちていた本をゆっくりと取る。それには明らかに隙があるように見えた。


「シャルロットと空の仇……!! くたばれえええええええっ……!!」


 その隙を見て加賀は両手に持つロッカーをぶん投げた。しかし、銅像は避けようとしない。あの攻撃を耐えられるとでもいうのか?

 違う。高速で本をめくっている。何をしているんだ、あいつ。

 広げた本をロッカーに顔と共に向ける。すると、ロッカーは銅像にあたるほんのわずかなところで止まり、紫色の謎の輝きを(まと)いながら空中を舞う。百八十度回転し、その向きは銅像から加賀へと変わっていった。


「さらばだ」


「ははっ……そんなのってありかよ……」


『ドカアアアアアアン!!』


 ロッカーは加賀のいる方向に直進していった。加賀が高速で投げたロッカーを加賀の投げた速度の二倍の速さで触れもせずに投げ返した。加賀はロッカーの頭の部分から腹部に強く強打し、壁に倒れて動かなくなった。


「加賀あああああああっ……!! うううっ……!! ううっ……!! あああああああーーーーーーーっ……!!」


 ただ泣き叫ぶ赤城の声。赤城は加賀のバディ。二人で今までいろんな任務をこなし、周りからも高い評価を得ていた。辛い時、悲しい時、いつもそばにいたのは加賀だった。ちょっとふざけたところがあったが、そんなところも彼女の長所だった。

 その加賀が……動かなくなって……やられた……


「今ので三人。合わせて五人撃破。後四人。誰からでもいい。ふっふふふふっ! はっはははははっ!!」


 残った四人を見る。高々と笑う。泣き続ける赤城の声なんかまるで聞いちゃいない。睨みつける僕らの顔なんて視界に入っていても奴の視界には入っていない。こんな奴に勝てるのかよ……

★東條隆 南館一階 玄関前

★江南美沙 南館一階 玄関前

★紫可憐 南館一階 玄関前

★東條シャルロット 南館一階 玄関前

★加賀 南館一階 玄関前

★昇龍妃 南館一階 玄関前

★赤城 南館一階 玄関前

★天空城空 南館一階 玄関前

★上条樹 南館一階 玄関前


七不思議怪異六つ解決(残り一つ)

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