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後悔はしたくないんだが?

 上条がやられた。この中で唯一の能力者で一番の戦力。その上条が真っ先に狙われ、やられた。何より上条の攻撃。あの焼き尽くすような光熱と爆発を食らったのにも関わらず、かすり傷ひとつつかない。

 その上条を倒した敵が今、目の前にいる……!!


「どうした。かかってきていいぞ。安心しろ。あいつは特別。お前らには多少なりとも手加減はしてやる」


 恐ろしく冷静な言葉。息切れ一つしていない。銅像が息切れなんてのもおかしな話ではあるが、あれだけ上条をタコ殴りにしたのにも関わらず、全く疲れていない。それどころか、気合がさらに入ったように見える。


「さっきの上条くんの攻撃で倒せなきゃ、もう私たち終わりじゃん……ううっ……」


「こりゃ、管理局ですらお手上げかも」


 みんな諦めかけている。幸いにも相手はこちらが動くのを待っている。その隙に逃げる? どこへ? 後ろは開くことができない南玄関。左右は壁。そして前に続く廊下はは二宮金次郎像が。逃げ道なんてどこにもない。


「あーしはごめんだ……! やられるくらいならやってやる……!」


 昇龍は前へと踏み出す。


「無茶だよ! あんな化け物に勝てるわけないって!」


「それでも……! こんなところでじっとしてるのは負けたも同然だ……!!」


「妃さん……」


 下駄箱を通り、銅像の前に向かう。昇龍の気合いはすごいもの。満足できる結果を示したいと思ったのであろう。他の七人は進んでいく昇龍を見守る。

 可憐は? 可憐の姿は震えていた。強さに恐怖しているのではない。二宮金次郎像が動いているという動かないものが動いているということに恐怖しているのだ。


「あーしが相手だ! いくぞ!!」


「ほう。気合は十分のようだ。こい」


 銅像の前に立つ。目が合う。何を言っても銅像は冷静。それでも怯えることなく、前へ進んだ。走り出した。


「うおおおおおおおっ!!」


 勢いよく走る。その走りはさすがはクラス一の脚と言ったところ。だが銅像は動かない。じっとしている。ただ右手に本を持ち、右足を少し出しながら攻撃を待つ。


 昇龍は右足を使い、可憐なる回し蹴りを決める。当たればかなり痛いはず。しかし、それをヒョイっとジャンプして避ける。

 次に昇龍は右拳を胸部に入れる。だが、空いている左手を広げて防ぐ。さらに左拳で突く。しかし、それも銅像の頑丈な左手で防がれる。その後も右、左、右、左と何度も攻撃を仕掛けるが、全て左手のみで防ぎ切る。

 本を持つ右手は使わない。


 その隙に右膝を腹部に入れる。すると、フィギュアスケーターのように後ろに反り返ってかわす。

 さらに隙を見て左足で足元を引っ掛けようとするが、それも軽いジャンプで当たらない。

 何をやっても通らない。

 まさに化け物。

 いつのまにか昇龍の目の前には二つの銅の指が。親指と人差し指。親指は人差し指を弾き、それを放った。


「うわっ!!」


 そのまま昇龍は飛ばされていった。銅像の指の形を見るとデコピンの後のような形になっていた。額にありえないほどの威力で昇龍を吹き飛ばした。


「妃さんっ……!!」


 そのまま昇龍は見えなくなる。上条とは反対方向の南側一階東側の何メートル先の奥に飛ばされたのだ。

 そこは七人からしてみればもう死角。どうなったかもわからない。


「二人撃破。どんどんかかってこい」


 何をしても余裕の言い方。何より銅像は先程一歩も動いていない。銅像がくらわせたのは二本の指で行えるデコピンのみ。動かずしてデコピンのみで昇龍を倒した。


「む、無理だよ……! あんなやつどうすればいいの……!」


「上条さんの攻撃は当たっていても全て無効。昇龍さんの場合、攻撃すら当たっていませんでした。勝つ術はあるのでしょうか」


 その言葉に隆は何か引っかかった。


(最初の上条の攻撃は無効。でも昇龍の攻撃は回避した? 昇龍の攻撃は無効にはできなかった?)


 最初の上条の攻撃。光熱のレーザーや爆発は全て確実に当たり、無効になっていた。しかし、昇龍の攻撃は全て回避していた。何かがおかしい。なぜ回避したんだ?


「……っ!? みんな、聞いてくれ! 多分、あいつは物理攻撃は受けれるんだ!」


「物理攻撃?」


「最初の上条の攻撃を受けたけど無効になった。だったらなぜ昇龍の攻撃を受けずに避けたか。それは、物理攻撃が効くからだ。上条のあの攻撃は全て物理攻撃ではない。だからあいつを殴り続ければ突破口は見えるはずなんだ!」


 それがわかっただけで大きかった。半数は「なるほど」と頷くが――


「でも、あんなに避けられたら当たる攻撃も当たらないよ!」


 しかし、それはあくまで弱点が分かっただけに過ぎない。美沙の言う通り、物理攻撃が弱点だとしてもそれを当てなければ意味がない。だから昇龍はやられた。

 全てを防ぎ避ける銅像。勝ち目なんてない、そう誰もが思っていた。


「私が行く」


 そう言い出したのは天空城だった。天空城はこの中では可憐に並んで一番体術近距離戦に向いている。そう、合気道七段。何度も大会を制覇してきた彼女には敵ではない。一撃を決めることができれば、戦況は大きく変わる。


「策はあるんですか?」


「ある。私一人で行ってもダメだと思うから何人かで攻撃をする。できれば、可憐さんあたりが来てくれれば大きく戦況は傾くと思うんだけど」


「……ごめんなさい。こんな時に一番役に立たなくてはいけない私が……」


 可憐の体はまだ震えていた。それを察し、加賀がわざとらしく手をあげる。


「はい!! はーい!! 加賀がお供しますよー!! なんせこの加賀、力だけは自信あるのでね!!」


 加賀は右の二の腕を左手で軽く叩き、力があるアピールをする。それは上司である可憐をカバーする言葉。

 加賀は今日この日知った。人類最強と呼ばれた可憐にだって怖いものがあると。ならそれを補い合うのが仲間である私の役目だと。加賀だって本当は怖いはず。あんな人間じゃない生物と戦うなんて。でも、可憐についていくと決めたからには全力で可憐をサポートする。それが仲間というものだ。


「では、私も行きます」


「ありがとう、加賀さん、東條さん。助かります」


 シャルロットも戦う覚悟を持つ。これで戦うのは天空城、加賀、シャルロットの三人となった。この三人はいずれも強力な強さを持つ。天空城は合気道、加賀は怪力、シャルロットはオール9999(エンドレスナイン)。戦力としては十分だった。


「それなら私も――」


「赤城はここにいて! 美沙ちゃんを守ってあげて!」


 赤城も行こうとするが、加賀に止められる。美沙を守るように言うが、それは半分。もう半分は赤城を危険な目に合わせたくないからという、年長であり、バディとしての気遣い。傷ついてほしくなかった。

 それは彼女の小さな微笑みから察することができた。


「なら僕も行くぞ。男の僕が行かなくてどうする!」


 隆がそう言った瞬間、加賀が頬を膨らます。吹き出した。


「ぶっはっはっはっはっ!! 引きこもりに何ができるにえ!! あっはっはっはっはっ!! 冗談はそのふざけて口調だけにしろっての!!」


 敵が目の前にいるに関わらず、加賀はひたすら笑い続ける。でも、隆が本当は強いってことは加賀は知っている。あの遊園地のショーで間近で見ていたのだから。だからこの笑いは別の意味でおかしかった。

 そのまま加賀は銅像の方へと向かっていった。


「何だとお前!! こんな時に何笑って――」


「可憐のことは、あんたが守ってね」


「……っ!?」


 加賀はすれ違いざまに隆の耳元でいった。「可憐のことは、あんたが守ってね」と。その言葉に振り向くと、加賀も隆の方を向いていた。加賀は一瞬だけあざとくウインクをし、再び正面を向いてから後ろを振り返らずに進んでいった。可憐は隆のことを信頼している。

 それを加賀はよくわかっていた。それなら、可憐を守れるのは隆しかいない。そう思って後のことは隆に任せたのだ。


 加賀に続き、天空城とシャルロットも進んでいった。

 やるしかない、もう引けない戦い。

★東條隆 南館一階 玄関前

★江南美沙 南館一階 玄関前

★紫可憐 南館一階 玄関前

★東條シャルロット 南館一階 玄関前

★加賀 南館一階 玄関前

★昇龍妃 南館一階 玄関前

★赤城 南館一階 玄関前

★天空城空 南館一階 玄関前

★上条樹(?) 南館一階 玄関前


七不思議怪異六つ解決(残り一つ)

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