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残り二つなんだが?

 隆たち八人は玄関の前にいた。

 そこにはあるものがあった。


「なんだこれ」


「そういうことだ。全く、訳がわからん」


 扉はまさに、天空城の言っていた通りのものだった。扉はもちろん施錠されている。でも驚くのはそこではない。取っ手口の方。鉄でできた取っ手口には奇妙に空いた七つの穴。大きさはどれも均等なもので、七つの穴が円を描いて一つの丸ができている。大きい方から内側に向いており、全ての穴にはよくわからない文字が書かれている。それぞれ別の色で書かれていた。


「これって何語だ? 外国の文字? どこかで見たような……」


「でもこんな形の文字をした国なんてあるの? 誰かが適当に書いた文字なんじゃない?」


 穴の中の文字は韓国語をさらに(ひね)ったような文字の形。それが七つ。どれも読むことはできない。

 そんな時、シャルロットが前に出る。


「これ……赤色です、こっちは黄色、これは緑色……」


「お前、この文字がわかるのか!?」


 シャルロットは一つずつすらすらと文字を解読していく。いくら頭が回るシャルロットとはいえ、この文字は世界のどこを探してもない。そんな文字を解読しているとはどういうことか。


「はい。これ、インベスト文字です」


「インベスト? やっぱりあいつらか」


 インベスト文字。投資業界トップのあの六人が住んでいる世界がインベスト。その世界で使われている文字。日本でいう日本語のようなもの。


(これってもしかしてあの時の……)


 隆は一度この文字を見ている。スマホに一度送られてきている。結局、今回の学校を封鎖したのも七不思議怪異も全て投資業界が仕組んだこと。何もかもがやつらの茶番でしかない。

 しかし、なぜシャルロットはこの文字が読めたのであろうか。隆にはそこがまた分からなかった。


「でもそう考えたらシャルロットちゃんの言った赤色は彫られている文字の色も赤色だね」


 赤色と言った場所には赤色で文字が彫られている。黄色と言った場所には黄色で彫られている。それが七つ、全ての文字が色で表されていた。


「黄色に……この穴……もしかして――」


 隆はポケットから黄色の勾玉を取り出す。これは、人体模型を倒した後に出現したもの。それを何に使うかはわからないまま、ポケットに入れていた。それをそこにはめる。


『カチッ!』


 見事にピッタリハマり、綺麗な音が鳴る。それを見て全員が驚く。


「は、ハマった……」


「みんなも、七不思議怪異を倒した時に色のついた勾玉が出てきたはずだ。持ってるか?」


「そういえば……」


 持っているものはポケットを探る。シャルロット、美沙、昇龍、天空城。この四人が色違いの勾玉をそれぞれ手から出した。全員、七不思議怪異を解決した時に現れ、それをたまたましまっていた。


「多分それをここにはめるんだと思う。頼む」


 隆の言葉に四人は頷き、取り出した四つの勾玉をそれぞれの色の場所へとはめていった。




 これで埋まったのは五つ。しかし、残り二つ足らない。


「あと二つか」


「ど、どうするのよ……」


 残りは歯抜けになったオレンジ色と白色。この二つを持っているのはこの八人の中には誰もいない。おそらく、この二つを埋めればこの扉は開くはず。でもどちらもない。またこの奇妙な校内を探し回るにしても、すでに全員疲れ切っている。そんな力はない。八人は気力だけではこの状況をどうすることもできなかった。



「七つあるうち、五つ埋まった勾玉。そのうち二つは埋まっていない。なるほど、そこで僕の出番ってわけか」


「……っ!?」


 その声に全員が驚き、声のする方向を見る。特に隆は声なき声をあげ、勢いよく向いた。その人物は南館玄関の隣にある大きな来賓玄関からゆっくりと歩きながら死角になっている壁から姿を表す。とても落ち着いていて綺麗な男性の声。青色の髪。

 隆が今、一番会いたい人物だった――


「元気にしてたか、我が兄弟」


「上……条……お前、本当にあの上条なのか……」


 上条樹。四月に隆のクラスに転校してきた謎大き青年。隆の副業を何度か助けていたが、軌賀と蘭壽の攻撃によって倒れる。その後は半月以上、かなりの重症で精神病棟へと運ばれていった。そんな彼が今、隆の目の前にいる。


「正しくは玄橆だけどね。でも、上条って名前でまた呼んでくれるのは嬉しいよ」


 隆の目には涙が溢れていた。その人物が歩いてきて、南館玄関の五つハマった取っ手口を見る。しばらく見てからポケットを探り、あるものを取り出した。

 オレンジ色の勾玉。それをオレンジ色の場所にはめる。特に何もなく、音を立ててハマった。


「あなた、それをどこで……!?」


「音楽室にある肖像画。察しのいい人はわかるんじゃない。あいつを倒したら落としていったよ」


「だから音楽室が瓦礫(がれき)だらけになっていたのですね」


 音楽室の肖像画。扉の正面にある肖像画は目から無数の光熱のレーザー無作為にを出して上条を攻撃していた。しかし上条もまた能力者。その能力を武器に、全て攻撃をかわし肖像画を撃ち抜いた。

 七不思議怪異肖像画を解決したのは上条だった。


「そういうこと。でも、そのあと音楽室から音楽が聴こえただろ。そこに行けば君たちとは合流はできたかもしれないが、それでもまだあと一つ残ってる。だからそれをずっと探すために校内のあちこちを探してたんだよ」


 上条の耳にもあの音楽室は聴こえていた。しかし、それを解決してもまだあと一つ残っていたため、校内を(くま)なく探していた。あの場には上条を除いた全員が音楽室にいた。だから誰も上条に会うことはなかった。


「流石の僕も疲れてここで休んでたらみんなが集まったってわけ」


「じゃあなんであーしらがここにいる時にずっとそこにいたんだよ。カッコつけか?」


「当たり前だろ! 遅れてきたらカッコいいだろ!」


 隆はそこで確信する。このふざけたノリもあいつなりのコミュニケーション。紛れもない、目の前にいるのは上条なんだと。


「それで上条、残りの一つは見つかったのか?」


「残念だけど見つからなかったよ。七不思議なんだし、残りの一体がどこかにいることは確実なんだけどなあ」


「その七つ目がもしかして、あなたという可能性は?」


「……え?」


 可憐が唐突に銃を出し、上条に向ける。弾は入っている。(おど)しなんかではない。確実にいつ撃ってもおかしくない構え。

 しかし、上条は動じない。両手で手を挙げ、可憐な目を見る。


「あなた、どうして七不思議のことを知っているの? 何より、どうして私たちが音楽室にいる間に七不思議怪異が残り一つだとわかったの? 答えは簡単。あなたが残りの七不思議怪異、もしくはその黒幕だからよ!!」


「ちょっと待て、可憐っ!! 上条はそんなことするやつじゃない!!」


「どうかしらね。私は正義執行管理局の一人よ! カルテだって我々は目を通してる! 上条樹が病院にかなりの重症で運ばれているとだって知っている! カルテの結果では退院は最低でも三ヶ月かかるって情報が出てるのよ!」


「やめろ!! その銃を下ろせ!! 上条は僕の友達だ……! 大切な……大切な友達なんだぞ……!!」


「いいんだよ、隆。君のことは知らないけど、君はこう言いたいんだろ、僕が上条樹の姿をした七不思議怪異だと」


「あら、わかってるじゃない」


 可憐の最後の言葉は冷静だった。そして可憐の言い分もまた、全て筋が通っている。運ばれた後は精神病棟で入院していた。かなりの重症のため、診断した医師は最低でも三ヶ月はかかると言っている。それが約一ヶ月で退院したなんてありえないのだ。

 あまりに筋が通っているうえ、上条までもが冷静なため、隆は何も言うことはできない。

 その場の全員も驚いて口を開くことはできなかった。

★東條隆 南館一階 玄関前

★江南美沙 南館一階 玄関前

★紫可憐 南館一階 玄関前

★東條シャルロット 南館一階 玄関前

★加賀 南館一階 玄関前

★昇龍妃 南館一階 玄関前

★赤城 南館一階 玄関前

★天空城空 南館一階 玄関前

★上条樹(?) 南館一階 玄関前


七不思議怪異六つ解決(残り一つ)


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