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七不思議怪異なんだが?

「七不思議怪異って結局なんなんだ?」


「さあ。でも七不思議と言ったら学校の七不思議とかよく聞くけど、何か関係があるのだろうか」


 美沙と隆を除いた六人は円を作り、話し合っている。美沙はピアノの修理のため、その円の中には入らないが、話は聞いている。隆はというと、音楽室で白目を向いてビクビクしながら意識を失って倒れていた。

 可憐の猛攻撃がよほど効いたのだろう。

 そんな七人の話題は自然と七不思議のことについて話すようなっていた。


「学校の七不思議といえば、トイレの花子さんがいたりとか、夜中に人体模型が動いたりとかっていうのは聞いたことあるけど」


「トイレの花子さんといえば、さっきそれっぽいものを見たような」


「トイレの花子さんいたんですか!?」


「ああ。かなり前だけど。しかし、個室の扉を開けたら悲鳴をあげていつのまにか消えていた」


「消えたっていうことは解決したってことでいいんじゃねえのか」


 トイレの花子さんは一番初めに解決された七不思議怪異の一人。天空城を襲おうとしたところ、足を思いっきり挟み、あっけなくやられる。本当はもう少し活躍していたかもしれないが、天空城が相手ならば仕方がない。解決した当の本人は全く自覚がないみたいだが。


「人体模型なら私たちが見たね」


「はい。表情ひとつ変えず、ものすごい速さで追いかけてきました」


「それならあーしも見た……というか、戦った。戦闘能力もあって、オネエ口調で内臓揺らしてたし。気持ち悪かったぜ」


 赤城、加賀、昇龍の三人は人体模型に遭遇している。ずば抜けた速度と戦闘能力はこの三人がよく知っている。走る時には内臓が揺れ、顔は無表情で常にオネエ口調。そのごちゃまぜのギャップがさらに恐ろしさを引き出していた。


「なにそれ、気持ち悪。ということはそいつまだこの学校をうろついてるってわけ? うええ……」


「そういえば見ないね。もしやあいつがラスボスだったり……」


「それなら私が倒した。人体模型の心臓を銃で撃ち抜いてね」


 可憐もまた人体模型に遭遇している。可憐の場合、銃を持っていたため、心臓を撃ち抜くことができた。でもそれは可憐一人の力ではない。当時、可憐はかなり(おび)え、人体模型に捕まっていた。

 そんな時に隆と出会い、隆が人体模型の動きを封じたため、心臓を撃ち抜くことができた。


「さすがは可憐です。でもよくあの人体模型を倒すことができましたね。失礼、可憐なら可能でしたね」


「あ、当たり前じゃない……! わ、私を誰だと思ってるのよ、あは、あはははは……」


 可憐は笑いながら後ろを目だけで振り向いて隆を見る。隆は相変わらず倒れていてこちらに気づいたいない。目線を正面に戻すと加賀はぬいぐるみのような何とも言えぬニヤニヤした顔で可憐を見つめる。どうやら、察したようだ。


「な、なによ……」


「別にい〜」


「……」


 察せられたかと思い、目を泳がせる。でも加賀はそれ以上言わない。だからもしかしたらたまたま自分を見ていたのではないかと安心し、一息つく。

 でも本当は違う。加賀のからかい戦法の一つの焦らし。短い言葉で言った後は何も言わず、ただただ目の視線で攻撃するといういやらしいもの。


「あとはあの鏡でしょうか。鏡から手が出てきて私の足を引っ張ってきて、冥府がどうのこうの」


「鏡から!? 大丈夫だったの!?」


「はい。そこの管理局の二人と昇龍さんが」


 シャルロットの遭遇した鏡。最初は心の中で思っている人物を鏡の中に映し出すと言うロマンチックなものだったが、次第に手が出てきて彼女の足を掴んで鏡の中に飲み込んでいった。そのあとは加賀と赤城がシャルロットを引っ張り、昇龍が鏡を割った。


「そうだったんですか。うちの生徒を守っていただき、ありがとうございます。それと昇龍さんも」


 正座しながらも律儀に頭を下げ、三人にお礼を言う天空城。これも風紀委員だからということだろう。


「いえ、仕事ですから」


「いいよ、そんなの。シャルロットはあーしのダチだし」


「じゃあ、お礼の代わりに空のおっぱいを揉ませ――いててててっ!!」


 赤城は目を(つむ)りながら黙って加賀の耳たぶをつねる。そんなに痛くはないのだが、それをなぜか大袈裟に言っているみたいだ。


「あと私が遭遇したのといえば、階段でしょうか」


「階段? 階段ならそこらじゅうにあるじゃない」


「いえ。この学校の階段はたくさんあっても、十三段の階段は一つもないはずなんです。それがあったのがどうにも違和感を覚えてしまい、階段を叩いたらそれがあっていたみたいで」


「階段なんてよくわかったね。階段の段数とか普段意識したことがなかった」


 階段もまた七不思議の一つ。この学校の階段の段数に十三段という段数は本来は一つもない。これは記憶力のいいシャルロットができたこと。

 探している間、直接的には攻撃は一切してこなかったが……


「でも、私一人じゃ解決はできませんでした。その後の攻撃を加賀さんが命懸けで守ってくれましたので、感謝してもしきれないくらいです」


「加賀が? あなたやるじゃない。命懸けなんて相当の覚悟がなきゃできないことよ」


「わ、私は何のことかわからん! わ、私は何もしてない! 全部シャルロット一人で解決していました!」


 加賀は目をぎゅっと(つむ)りながら首をブンブンと振ってシャルロットを指さす。シャルロットに花を持たせたいというのもあるが、いつもなら市民の前で胸を張って笑い流しているが、こういう状況だからか恥ずかしいというのもあるみたいだ。


「別に恥ずかしがることじゃないわ。むしろ人を助けたと思って(ほこ)りに思いなさいよ」


「う、うるさい……! 私は(なん)もしとらん! だから黙れ、このおっぱい星人!!」


「なっ……!? 誰が何星人ですって……もう一度言ってみなさいよっ!!」


「おっぱい星人おっぱい星人おっぱい星人っ!! その胸を武器に東條隆を誘惑してたおっぱい星人っ!!」


「何ですってえええええええっ……!!」


 可憐は立ち上がり、加賀のところに近づく。加賀は必死で室内を走り回りながら逃げ出す。それを可憐は怒りながら追いかける。まるで子供みたいだ。

 残りのメンバーはその二人をお構いなしに話を続ける。


「あとはこのピアノよね。こいつも七不思議怪異なんでしょ」


「そうデース!」


「だからあなたが喋ると気が散るから黙ってて!」


「了解デース!」


 美沙の言葉に返事をするピアノ。ピアノが声を出せば、かなりの至近距離で修理をしている美沙の手を(わずら)わせる。それを言ってもなお、喋るのをやめないお喋りなピアノに一同はクスリと笑った。


「ピアノはあとどのくらいで治りそうですか?」


「もうちょいだよ。あと数十分あれば……」


 このピアノは他と違って解決方法が違う。これまでは物理的攻撃で許されていたが、このピアノは修理をして解決されるようになっている。そして修理をできるのがこの中では美沙だけ。その美沙もやったことはないが、これまでのスキルからできると隆に押され、やることにした。

 それがもう時期終わるようだ。


「これで七不思議は五つ。じゃあ残りの二つはまだってこと?」


「そうかもな」


 トイレの花子さん、人体模型、鏡、階段、ピアノ。これで五つ。隆を除いてそれ以上遭遇していると言う人はこの場にはいない。そんな時、再び記憶力のいい少女が何かに気づく。


「あの、ほんの些細(ささい)なことかもしれませんが」


「何かに気づいたのか?」


「はい、ここの音楽室に飾られているあの肖像画。最初から一つありませんでしたっけ?」


 シャルロットが指さす先。そこには空白があった。その横にはいくつもの肖像画。落ち掛けているものもあれば、下に落ちているのもある。でもそれは全て、どこにあったかがわかる位置。

 音楽室の入り口から見て左から二番目の肖像画のみが空白。それは音楽室の真正面に位置している。これは偶然なのだろうか。


「本当だ。下にも落ちてなさそうだし」


「それにこの音楽室の荒れようだってそうです。まるでここで戦いがあったような」


「言われてみればそうだな。他の教室はこんな瓦礫(がれき)だらけじゃなかったし」


 隆、美沙、可憐以外の全員はその間校内を調べている。教室や廊下を。しかし、ここまで酷い教室は他にはなかった。ここで何かがあったことはこの荒れ方を見れば一目瞭然(りょうぜん)


「あーしはここの階の東渡り廊下で動けずにいたからわかるけど、あんときすげえ爆発音と爆風が起きてた。みんなも聞こえたろ、爆発音」


「そういえば。今思えばここの音だったんだ」


 昇龍はしばらく四階東渡り廊下で動けずにいた。その間に爆発音と爆風が吹いていたのは知っている。爆発音はこの中の全員が聞いている。

 もし、昇龍が動くことができて確認できていれば何があったかを見ることができただろう。

 五人は考えてもわからないと感じ、それ以上は何も言わなかった。

★東條隆 南館四階 音楽室

★江南美沙 南館四階 音楽室

★紫可憐 南館四階 音楽室

★東條シャルロット 南館四階 音楽室

★加賀 南館四階 音楽室

★昇龍妃 南館四階 音楽室

★赤城 南館四階 音楽室

★天空城空 南館四階 音楽室


??? 不明


七不思議怪異五つ解決(残り二つ)


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