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玄関の謎なんだが?

 ピアノを修理する美沙。ピアノは時より、声を上げる。美沙はやれやれと思いつつ、修理を続けていた。


「そ、そこデース! そこを触られるの最高デース!」


「気持ち悪いんだけど。ちょっと静かにしてもらえる」


「了解デース!」


 一方、一同は美沙の修理が治るのを待っていた。美沙が言うに、ソの一つの音がおかしいだけで他は特に異常がないため、すぐに終わるらしい。

 天空城の隆の罵倒はしばらくすると収まり、本題に入る。


「そういえば、皆さんは南館玄関を見てみましたか?」


「南館? 北館玄関なら見たぞ。扉は施錠されていて開かなかったが」


 ここに来て最初のころ、隆は南館玄関に来ている。だが、隆の言った通り扉は施錠されていた。隆のその言葉からは他の人たちは周りを見渡すだけで誰も答えなかった。天空城以外の見渡している人たちは南館玄関には誰も行っていないのだろう。

 しかし、天空城は南館玄関に行っていた。


「実は南館に行ったんだが」


「え!? 天空城さん、行ったんですか!?」


「当たり前だろう。こんなところに突然来たら出口探すのは当然。まさか、誰もアレを見ていないのか?」


 確かにそうだ。隆は北館玄関を調べたからまだしも、他の人たちは誰も玄関には行っていない。こんな状況だからなのか、皆頭になかったのだろう。

 なんせ、こういう時に一番頭が回るはずの可憐が、恐怖心で隆から離れず状態。そんなことすら頭になかっただろう。


「アレ?」


「扉は確かに施錠されていた。でも、扉の取っ手口におかしなものがあった。七つの奇妙な形をした穴みたいな」


 天空城はトイレの花子さん解決後、一番に降りて南館玄関へと向かった。北館同様、開くことはなかったが、何かをはめるかのような取っ手口の全て均等なサイズに穴が掘られていた。

 それが七つ。時計回りに掘られていたそうだ。

 不審に思いながらも、その後は北館を探索したそうだ。


「もちろん、夏休みに入るまではこんなものはなかった。というか、夏休みも風紀委員の仕事で学校に来て設備の点検とかもしてたけどあんなものはなかった」


「七つ? 七不思議怪異……? 何か関係があるのでしょうか」


「あるかもね。七つの穴と七不思議怪異。これほどまでに数字が揃ってるなんてことないと思うけど」


 赤城の言葉に一同は考える。しかし、関係があるからといってここから動くわけにもいかない。美沙と数人が音楽室に残り、残りの数人が調べに行くとしてもそれは意味のないこと。

 すでに天空城がそれを確認している。

 天空城が分からなければ誰もそれをわかるはずもないうえ、まだあと七不思議怪異が一つ残っていることとなる。

 よく、最後に残るやつが一番強いというのはゲームではお約束。それがある場合もないとは言い切れない。

 そうなれば、そこへ向かった人物だけでは解決できない可能性だったある。


 そんな会話を一同はして、結局音楽室にとどまることにした。



「あれ? そういえば加賀は?」


「そういえばさっきからいませんね」


 可憐が全員を見渡すと、さっきまでいた加賀がそこにはいなかった。いつのまにか消えていた。いつ消えたのかもわからない。赤城の隣に座っていたはず。


「赤城。あなた知らない?」


「さあ」


 その二文字を目を(つむ)っていう。赤城と加賀は管理局の中でも最強コンビと言われている。そんな赤城が冷静に言った。普通なら少しは心配になるはず。それだけ加賀を信頼しているということ?

 可憐もよくわからなくなっていた。


「今一人にさせるとまずいんじゃないのか?」


「そうなのよ。ほんともう、あの子ったらどこほっつき歩いてんのよ」


 今一人にさせるというのはとてもまずい。いくら彼女が強いとはいえ、七不思議怪異が彼女を襲うかもしれない。そう思うと少し心配だった。

 とはいえ、出て行ったならすぐにわかるはず。可憐と隆の後ろが扉なのだから歩く音くらいするはずだ。


 そして、可憐がその言葉を発した直後だった。


「うらめしやあああああ!!」


「ぎゃあああああああっ!!!!」


 可憐の背中から声が聞こえ、ムクムクと影は大きくなる。肩に少女の両手がバシッと音を出して強く置いた。

 その声で過去最大に悲鳴を浴びながら隆に全力で抱きついた。腕を隆の体に回し、胸を隆の体に押し当てながら体を挟む。目からは大量の涙。顔も隆の肩に埋める。


 そしてその両手は離れていき、可憐を左手で軽くポンポンと叩いてから赤城の隣に座った。


「ドッキリ大成功っ! やったね、赤城! いえい!」


「はあ……」


 ウキウキの加賀は赤城に向かって手をあげる。赤城は目を開けずに真顔でそれに触れ、ため息をついていた。


「加賀あああ……!! あ、あんた……!! ほんと、いい加減にしなさいよ……!! 赤城!! あんたも共犯!! う、うううっ……!! ひっく……! こ、怖かったあ〜……!!」


 泣きながら顔を隆の体で拭いている。顔はもうぐちゃぐちゃ。可憐にとっては心臓にもタチも悪いものだった。しかし、加賀の悪戯というのはこれのことではない。本当はこの後のことを指す。


「私は共犯ではありません。加賀がどこに行ったか私も本当に知らなかったのでそれを言っただけです」


「またまた〜! 素直になっちゃいなって〜! 本当は可憐のあの様子を見たくてしたくせに〜! くせにくせに〜!」


「……」


 赤城の言っていることは本当だ。いつのまにかいなくなっていた。加賀は管理局の一人。音を聴かさず、消えることなど容易なこと。それで赤城を含めたこの場の全員から気づかれることなくいつのまにか姿を消し、隆と可憐の背後に回っていたのだ。

 しかし、加賀の言葉を聞き、赤城は目を開いて横目で何もない壁を見る。


「あんたたち……! ううっ……! ひ、ひどいよお〜……!」


「加賀。タチが悪いぞ」


「にひひひひひっ!! つい癖でね〜!! それより可憐、ずっと思ってたけどさ、なんでそこの東條隆にくっついてるわけ? 東條隆は管理局のターゲットのはずでしょ」


 加賀の表情が一気に変わる。かつてないほど冷え切った顔。光の入らない瞳で可憐な瞳を見つめる。それもそうだ。可憐以外の管理局の人たちから見れば可憐と隆は敵同士。普通に話すことすら危ういのに、ずっとくっついている。

 それを疑問に思わない方がおかしいレベル。


「可憐さんはお兄ちゃんのターゲット? どういうこと?」


「可憐さんは正義の鏡……もしや東條隆、あなた何か犯罪行為に触れたのか」


「だからしてねえって!!」


 美沙と天空城が一番状況をわかっていなかった。美沙は単純にわかってはいないが、天空城は可憐の仕事柄から隆が何かしたのではないかと疑っていた。

 しかし、それは表上では事実なのだ。


「い、今は休戦……! そう、休戦なのよ……! こんな状況にお互いなってるわけだし、い、今は手を取り合うべきじゃない?」


「まあ、一理あるよ。じゃあ、抱きついている理由は?」


 せっかく美沙が可憐のプライドを守っていたのを一瞬に崩す。それが何を意味するのかは加賀以外誰もわからない。知っているとすれば赤城。その赤城も同様、真剣に可憐を見つめる。


「それは……その……この人が怖いだろうな〜って思って……えっと……ここで倒れてもらっちゃ……管理局としても困るわけじゃない……」


 すると、しばらくの間を開けてから加賀の真剣な顔は一気に崩れ、爆笑しだす。まるで、さっきからずっと笑っていたかのような。赤城はまた目を瞑る。


「あっはははははっ!! 言われてみれば確かにそうだ!! さすがは我らが局長!! 数手先のことも考えた上での行動なんて、ぺーぺーの私らには全く考えもつかないことだったよ!!」


「はあ……」


 可憐は大きくため息をつく。自分が怖いから隆にしがみついていることを気がつかれなかったから安心しているようだ。しかし、それも(つか)の間、加賀は再び真剣な顔に戻る。そして、小さな声でいった。


「でもね、可憐。これだけは覚えておいて」


 それは、管理局以外の他の全員から見たら恐ろしい言葉だった。


「私たちは可憐の仲間であり部下。可憐が何しようが可憐の自由。そしてそれは間違いなき正義の判断。可憐が命令一つすれば、私たちは何でもすることを忘れないでね」


「……っ!?」


 その顔はもう、笑っているのかなんなのかもわからない顔をしていた。笑っているの? 真顔なの? そして隣で無言で表情ひとつ変えない赤城。彼女たち二人は可憐の正義感を信じてついてきている。だから「何でも」という言葉を使った。

 その二人を見て場の空気は張り詰め、そのことに関して誰一人として口を開かなかった。

★東條隆 南館四階 音楽室

★江南美沙 南館四階 音楽室

★紫可憐 南館四階 音楽室

★東條シャルロット 南館四階 音楽室

★加賀 南館四階 音楽室

★昇龍妃 南館四階 音楽室

★赤城 南館四階 音楽室

★天空城空 南館四階 音楽室


??? 不明


七不思議怪異四つ解決(残り三つ)

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