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危険人物なんだが?

 南館一館 保健室


 昇龍、シャルロット、加賀、赤城。この四人は保健室にたどり着いた。シャルロットのことは同じクラスメイトと力のある加賀に肩を持って運んだ。彼女は禍々しい腕により、足をものすごい力で掴み取られた挙句、引っ張られた。そのせいで足が痺れ、腫れていた。

 歩くことすらままならなかった。


 三人は空港とかにあるような長い椅子に座ったあと、シャルロットの前に昇龍が床に座り、ガーゼや包帯を用意した。とはいえ、昇龍は保健の授業で習った程度。それ以上はどうすることもできない。


「ごめんなさい。私たちに医療知識はないもので」


「私たちは戦闘特化。医療関係はいつも管理局の医療チームに任せているから力になれないの」


 赤城と加賀にも医療知識はない。ましてやまだ未成年。シャルロット達よりも年下。なくて当たり前だ。それを二人は少し悔しそうにしていた。


「いいっていいって。それにあんた達はシャルロットを助けてくれた。むしろ感謝しても仕切れないくらいだよ」


「いえ、人を守るのが私たちの仕事ですから」


「そう言ってくれると助かるにえ〜」


 赤城は胸を張って応えた。加賀はよくわからないが目から滝のように涙を流している。そう、二人がいなければシャルロットはもうこの世にはいなかった。あのまま怪異に吸い込まれ、冥府へと誘わらていただろう。それを二人で引っ張り上げることができたからこそ、今ここにいるのだ。


 その時、ガラガラガラッ!と大きな音が聞こえた。保健室の扉が開かれ、一人の少女が姿を表す。


「はあ……はあ……はあ……いた……! って……え?」


「あ、あんたは……!!」


「美沙さんっ!?」


 美沙は全力で校内を駆け(めぐ)り、一番下の階の保健室にたどり着く。そして驚きを隠せずにいた。その場にはてっきり、シャルロットしかいないものだと思っていた。しかしそこには四人。あまり喋ったことのない昇龍と初対面の赤城と――


「……っ!?」


 その瞬間、加賀は近くにあったカーテンに急いで駆け寄り、隠れる。加賀は以前、美沙と顔を合わせている。あの遊園地では可憐は怪獣の着ぐるみを着て、赤城は後ろで控えていた。しかし、加賀は司会という立場でそのままの姿で舞台に立っていた。

 だから面識がある。ここでバレたらまずいと感じたのだろう。


「ん?」


 美沙の目にはものすごい速さで何かが動いたように見えた。しかし、今はそれどころではない。美沙はシャルロットたちの場所まで駆け寄る。


「あれ!? シャルロットちゃん怪我してるの!? どうしたのこの怪我!? 大丈夫!?」


「い、一様……(にわか)には信じがたいですが、鏡の中から腕が出てきて……それで掴まれたのです」


「それって多分、お兄ちゃんの言っていた七不思議怪異ってやつだね。大丈夫! 今から治療するから!」


 それを言った後、すぐさま手つきが変わり、治療を始めた。それはまるで、救急隊が人を助けるような手つき。そう、彼女の家は何でも屋。医療関係のことは母から幼い頃に教えてもらっていた。だから知識があったのだ。


「ありがとうございます……! お兄ちゃんということは隆さんもいるのですか?」


「うん。上にいるよ。あとお兄ちゃんだけじゃなく、可憐さんっていう公務員の人もいた」


「可憐……」


「可憐?」


「可憐!?」


「可憐さんってまさか……!」


 一同は驚いていた。この中にいる全員は可憐と面識があるから。昇龍にとって可憐は家族を殺そうとした人物。いくら麻酔弾とはいえ、その認識は変わらない。そして、昇龍組と対抗している管理局の(かしら)。そんな人物が今ここにいる。


 赤城と加賀にとって可憐は言わずとも同僚。最初に一度あってはいるが、その後居場所がわからなかった。しかし、その情報に驚き、加賀に限ってはカーテンから顔を出したくらい。それに自分ですぐに気がつき自らまたカーテンにくるまった。


 そしてシャルロット。彼女もまた、可憐を敵対してみている。無理もない。隆と出会って数分で隆を投げ飛ばし、ガトリングガンで自分たちごと蜂の巣にしようとしていた。これをどうみたら敵じゃないと見えるのか。


 二人は歯を噛み締め、憎しみの感情を(こら)える。二人は同僚の無事に喜ぼうとしていた。美沙はこの差がよくわかっていないと感じつつも、治療を続ける。


「うん。ていうか、あの人お兄ちゃんの腕と体にずっとしがみついているの」


「ええ!? 隆さんが危ないじゃないですか!?」


「おいおい!? 東條あの女に捕まってるのか!?」


「そうなんだよね。なんか危なっかしいっていうか」


「危なっかしいどころの騒ぎじゃないですよね、それ!?」


 美沙の言う「危なっかしい」とは「女として危なっかしい」という意味で決して物騒な意味ではない。あの巨乳を押し当てられ、隆のことを狙っている美沙にとっては危険な存在なのだ。

 昇龍とシャルロットにとってその意味は「今にも殺しそうな危なっかしい」という意味だった。それもそう。二人にはあの人物は言葉通りの危険な存在にしか見えていないのだから。


「どこだ!? どこにいるんだ!! あのアマ……!!」


 昇龍は今にも教室を飛び出しそうなくらいで椅子から立ち上がる。その表情はかなり激怒していた。今にも本当に殺しそうなくらいに。


「ちょ、ちょっと待って……! 変に相手を刺激しちゃうとお兄ちゃんがさらに刺激されて……だから今は一旦ここに残ってみんなで行こう!」


「それもそうだな」


「そうですね」


 美沙のいう「刺激」は「これ以上可憐を刺激すればさらに可憐の胸が隆に当たってしまう」と思ったから。そして二人にとっての「刺激」は、「これ以上可憐を刺激すれば隆が本当に殺されてしまう」のではということ。さっきから両者はよくわからない誤解をしてばかり。


 それを聞いて昇龍は納得して座った。


 そんな会話を二人は黙って聞いていた。


「赤城……! 赤城……!」


 カーテンから小さく顔を出し、手招きしてから赤城を呼ぶ。赤城はゆっくりと歩いていきく。加賀が何を話そうとしているかは大体はわかっている。


「にっひひひひひひひ……可憐、とうとうあの東條隆を捕まえたみたいだねえ」


「ええ。これで可憐の願いも叶い、より多くの人を――」


「ところであなた、さっきから何やってるの? 隠れてるのバレバレなんだけど」


 美沙はカーテンにくるまる加賀に声をかける。美沙にはバレていた。声も聞こえるし、カーテンもゆさゆさと揺れている。赤城は小さくため息をつき、観念したらと言わんばかりに横目でカーテンの中にいる加賀を見る。

 美沙は加賀に近づき、角度を変えてカーテンを見る。


「こんにちは、美沙ちゃん! 私はしゃべるカーテン! このカーテンには純粋な心を持っている子は触っちゃいけないんだ! 美沙ちゃんは可愛いし、とっても純粋だから触っちゃダメだよ!」


 突然声を高い声に変える。どうしても触らせない気でいる。こんなのに美沙は騙されるほど子供ではない。


「お生憎ね。私、純粋じゃないの」


「ひいえええええええ!!」


 それを美沙はアホらしいと思い、カーテンに思いっきり手をかけて引っ張り上げた。水色のボブと共に声を上げて加賀が姿を表す。


「あああああああっ!! あんた、あの時の司会……!!」


「ひいいいいいいい〜!! お許しを〜!!」


 そう。あの司会で加賀は可憐を止めようとはしなかった。それを美沙は覚えている。だから美沙は加賀の顔をずっと覚えていた。

 でもそれは管理局としての任務のため。だから本当はあの時、可憐に最後まで加勢をしなければならない。でも、内心隆を応援していた。それが伝わらないのは加賀にとっては少しもどかしかった。

⚫︎東條隆 南館三階 三年C組

⚫︎紫可憐 南館三階 三年C組

▲東條シャルロット 南館一階 保健室

▲江南美沙 南館一階 保健室

▲昇龍妃 南館一階 保健室

▲赤城 南館一階 保健室

▲加賀 南館一階 保健室


天空城空 不明


七不思議怪異四つ解決(残り三つ)

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