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ロッカーがおかしいんだが?

 南館三階 廊下


 隆と可憐は教室を一つずつ周り、調べていた。天空城がまだいるかもしれない。それに、他の人だっている可能性もある。


(可憐の証言だと赤城と加賀もいることになる。あの二人と一緒に行動できれば心強いはず)


 時系列的に今は赤城と加賀は昇龍と合流し、会議室で休んでいるところになる。そのため、この上の階にいることになる。もちろん、隆にそれはわからない。だからこそ、手当たり次第に部屋を見て回るしかないのだ。


「そういえば、何でお前は銃なんて持ってるんだ?」


 相変わらず腕にしがみついている可憐に声をかける。可憐は隆の目を見て口を開いた。


「寝るときにはいつも銃は入れてることにしてるの。緊急時にも備えられるようにね。ほら、小さい子が抱き枕抱いて寝るでしょ。それと同じよ」


「いや、全然違うと思うぞ」


 管理局でも銃を持って寝る人なんて可憐しかいない。その証拠に赤城と加賀は何も持っていなかった。意識は高いが、そうなると寝ている間も警戒心を張り詰めていることと同じ。とはいえ、その銃で助けられたのもまた事実。隆にとってそれは、非常に複雑な気持ちだった。


「もちろん、他の銃も普段の制服の時なら隠し持ってるけど、流石に寝巻きの状態だと隠そうにもハンドガンしか入れられないわ」


(いや、そもそも銃なんて入れないだろ……)


 そう。彼女はいつもどこからともなく銃を取り出す。いつのまにかガトリングガンを取り出したこともあった。どこから出しているのかは不明。もしかしたらまだ、ライフルやロケットランチャーなんかがあるのかもしれない。


「任務の時の制服には銃を仕込んでるし、プライベートでもいくつか入れてる。いつなんどき悪人が現れてもいいように」


「プライベートもかよ!?」


 任務だろうが任務じゃなかろうが銃を忍ばせ、日々周りを警戒しながら生活している。でもそれは、年頃の可憐にとって居心地の悪いものではないかと隆は心配になる。


「お前さ」


「可憐」


「はあ……可憐さ、銃持ってる時もかっこいいとは思うけど、銃を持っていない可憐もいいと思うぞ」


「なっ!? あなた何言ってるの!? 私に銃なしで生活しろっていうの!? 管理局局長の私が!!」


「いや、そうじゃなくってさ。可憐はルックスも悪くないし、可愛いところあるんだからおしゃれして銃は置いて遊びに行ったらいいんじゃねえか。赤城や加賀とか適当に誘って――って、どうした?」


 可憐は顔を隆の腕にくっつけていた。妙に腕が熱い。くっつけているとしてもここまで熱くならない。

 可憐は照れていた。加賀や部下にあれだけ彼氏なしとか言われ、歳の近い男性ともあまり話さない。そんな歳の違い男性がすぐ近くにいて、その男性から可愛いなんて言われた。

 年の近い男性に可愛いなんて言われたのは初めてで感情の整理がついていなかった。


「なんでも……ない……むうっ……」


「そうか。次で最後だな」


 さっきの隆は特に意識もせずに言った言葉。いや、少しは意識していたのかもしれない。しかし、可憐にもう少し自由な生活をしてもいいのではないかと思い、隆自らのプライドを削って発言した。

 最近の隆は昔に比べて紳士的。ただ、かなりの鈍感のせいでそれを最大限活かせていない。それがまたモテる理由なのかもしれないが。


 ガタガタ!ガタガタ! そこまで大きくない物音がどこかから聞こえてくる。


「何の音だ?」


「ん……」


 可憐は隆の腕から離れ、背中に隠れた。隆は慎重に音のする方向へと進んでいく。それは、最後の教室。ここを調べれば隆たちは上に上がる予定だった。しかし、時と場合によってはここで一悶着あるかもしれない。

 先程の七不思議怪異がまだ残っている可能性も。なんせまだ、半分も残っているのだから。

 慎重に。慎重に進んでいく。その後ろに隆の服を(つま)んでくっついて可憐もちまちまと進んでいく。

 教室に入り、その正体がわかった。


「ロッカー?」


 室内をスマホで照らすとロッカーがガタガタと揺れていた。室内の扉を念のため閉める。慎重に近づくが、その揺れは治ることはない。


「ちょ、ちょっと……やめましょうよ……」


「いや、そういうわけにもいかない」


 もしも七不思議怪異がいるのならば、一体残らず倒さなければいけない。そうしなければこの学校から出ることはできず、ここに閉じ込められたまま。それは隆自身だけでなく、可憐もそう。とはいえ、可憐はそのことについて何も知らない。だからわざわざ調べる必要がないと思っていた。


 ロッカーの目の前に二人は立つ。隆はロッカーの開け口を掴み、引くことにした。


「ふう〜」


 一旦深呼吸。


(大丈夫。あいつらなら倒せばいい。こっちには今はあんなんだが可憐もいる。そうだ、何も怖いこともなければ驚くこともない……!)


 そう思い、勢いよく力一杯引いた。

 バンッ!


「もう逃げられねえぞおおおおおおおっ!!」


「ぎゃあああああああっ!!」


「うわあああああああっ!? って、美沙あああっ!?」


「いやあああああああっ!!」


 隆が勢いよく開けると、そこにはロッカーの中でうずくまって座っている美沙がいた。美沙はよくわからないまま気がついたらこの教室にいて、ロッカーにずっと隠れていた。ずっとずっと。それはもう、隆が目覚めた直後辺りから。怖くなり、身動きが取れずにいたが、体がどうしても限界に達し、震えが止まらなかった。

 それが揺れたロッカーの正体。そして恐怖で何も聞こえなくなり、急に開いたロッカーにびっくりして美沙は叫んだ。隆も叫んだ。可憐は叫びながら隆に後ろから胸を押し当てて抱きついた。

 結果、三人とも叫んだ。


「お、お兄ちゃん……!! 怖かった……!! 怖かったよ――って、お兄ちゃん、その後ろにいる女の人誰?」


 美沙は今にも泣きそうなくらい、隆を呼んだと思ったが、後ろの可憐を見るや否や、指をさして一瞬にして真顔になる。


「ま、まさかお兄ちゃん……私というものがありながら他の女を……!! しかも、年上……!? めちゃ美人……!? ナイスブアデイ……!? うわあああああああっ……!?」


「ひいいいいいいいっ!?」


「おい可憐!! よく見ろ! 人だ! ヒューマンだ! あと、流石に距離が近すぎる! 離れろ!」


 可憐はそう言うと、胸を押し当てながら縮こまった腰を上げ、隆の肩から顔をひょっこりと出す。可憐の目にたった今、確かに人だと理解できたようだ。


「ほ、ほんとだ。ところで、あの子あなたの知り合いよね? 確か、遊園地の時に……もしかして彼女さん?」


「ちょっとお兄ちゃんっ……!? 可憐って……!? 今、可憐って言ったの……!? 名前呼びは私だけの特権じゃなかったの……!? しかも、しかも……うわあああああああ……!!」


 遊園地に以前、美沙と言った時、可憐は隆と美沙が一緒にいたのを見ている。だからてっきり二人が付き合っているのかと思ったのだ。美沙の方は可憐が無意識に隆に胸を押し当てているのを見て絶叫している。自分よりも格段に大きい胸を押し当てているのだから。


「あなたの彼女さん、変わった人ね」


「いや、幼なじみ――」


「すうおうどうえええすっ! 私たち、付き合ってまあああすっ! ごお〜めんなさいにえ〜!」


「ああ、そうなんだ」


 美沙は彼女でもないのに彼女と言い始める。口調もなぜかおかしくなる。それに対して可憐は普通に納得したような返事をした。別に隆のことが特別好きというわけではい。だから彼女がいるならいるで別に構わない。この返事は当然なのだ。しかし、それを美沙にはさらなる誤解を招くこととなる。


「そうなんだ……って……私の方が本当の彼女だからっていう余裕ムーブ……!? 私の方が上だからってこと……!? いやいや、私だって勝てる場所は一箇所くらいは……」


 隆の後ろに隠れている可憐の全身を満遍(まんべん)なく見つめる。自分と可憐を天秤にかけ、全てを比べた。

 身長、勝てない。年齢、勝てない。清楚さ、勝てない。色気、勝てない。胸の大きさ、勝てない。何一つ勝てず、全ての天秤は可憐に傾いていた。


「うわあああああああっ!!!!」


 頭を押さえ、絶叫する。それを呆れてみている隆と状況がよくわかっていない可憐。


「あなたの幼なじみさん、いつもこんな感じなの?」


「いつもはちゃんとしてるやつなんだけどなあ。恐怖でこうなったんだろうな」


「あなたも大変ね」


 口調がネイティブになったり、絶叫したりする美沙は隆も初めてみた。でも、こんな状況で不安にでもなればこうもなるだろうと納得をしていた。しかし、実際のところ恐怖ではなく、ただの嫉妬。

 嫉妬の末、全ておかしくなっていた。

⚫︎東條隆 南館三階 三年C組

⚫︎紫可憐 南館三階 三年C組

⚫︎江南美沙 南館三階 三年C組

▲昇龍妃 南館四階 会議室

▲赤城 南館四階 会議室

▲加賀 南館四階 会議室

東條シャルロット 南館二階 女子トイレ


天空城空 不明


七不思議怪異四つ解決(残り三つ)

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