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まんざらでもないんだが?

 北館四階 廊下


 廊下をうろうろする赤城と加賀。天井の電灯は付いておらず、付いている光は非常用の赤いベルのみ。彼女たちは隆のようにスマホはない。

 それもそうだ。寝る時にスマホをポケットに入れる人なんてこの中では隆くらいだろう。隆は寝る直前までロジカルファンタジーをやっていたのだから。


「ねえ、赤城」


「どうしました?」


 加賀は赤城の方を向き、声をかける。赤城も目を合わせ、加賀の言葉を待った。加賀は少し言いづらそうに口を開く。


「さっきの私、引いちゃったよね……嫌いになっちゃったよね……そりゃそうだよね。あんな状況で服を脱いでとか言ったり、体を触ったりとか……」


「……」


 加賀は先程の理科室で赤城の服を脱がせ、体を触っていた。でも加賀は本気で夢の世界にいると思ったため、夢の中にいる赤城はどんな反応をするのだろうかという好奇心でやったこと。夢じゃないとわかっていれば、もう少し控えめだっただろう。

 夢の中だから何かしたいという感情に揺らぐのは悪いことではない。だから加賀には悪気はないのだ。


「別に、赤城のことはエッチな目で見てるとかはないの……! 本当にないの……! 決して、二の腕を寝る前にふにふにしたいとか、任務中に赤城が汗をかいたのを見て息が荒くなったりとかはしてなくって……その――」


「嫌ってませんって」


「え?」


 赤城はため息を()いて呆れていた。呆れていたというのは、変なところで意識している加賀がいて、らしくもないと思い、呆れていたのだ。


「加賀が私に何しようが別に引きません」


「ほ、ほんと!? 赤城が寝た後に耳をくっつけて心臓の鼓動を数えていたり、お風呂の時に赤城が先に脱いだ後の服を満遍(まんべん)なく匂い()いだり、ネットの匿名掲示板に私と赤城のイチャイチャラブラブな夢小説を書いてたとしても引かない!?」


「引きませんってば。安心してください」


 赤城は表情ひとつ変えずに引かないと言った。心が寛大(かんだい)な赤城。なお、今の加賀の発言は全て現在進行形である。というか、赤城はただの天然で今加賀が言ったことが嘘だと思って引かないと言っている可能性はある。

 でも、実は本気で引いていない可能性もそれ以上にあったり……


「ただ……私も加賀が他の人と仲良くしているのを見ると……少し()けちゃいます」


 赤城の頬は少し赤かった。赤城もまた、加賀のことが……


「ええっ……!? も〜うっ! 赤城ってば可愛いんだから〜っ! 加賀お姉ちゃんに甘えていいんだぞ〜!」


「や、やめて……ください……! く、くすぐったい……!」


 赤城の顔に頬ずりをして、激しく顔を擦り始める。赤城もまんざらでもない顔をしていた。なんだろう、この光景。とても、てえてえでございます。


 その時、加賀の目にあるものが映る。


「ねえ、アレ何?」


「人?」


 加賀はそれを指さす。赤城の目には人が倒れて壁にもたれかかっているように見えた。そこは、東渡り廊下。その人物は動こうとしていたが、何度も壁に倒れてしまう。


 加賀たちは警戒しながら前へ進む。渡り廊下は外の光も当てられる場所。暗闇に照らされて姿を表したのは昇龍だった。


「ん? 妃さんっ……!?」


 赤城は走って昇龍の元へ駆け寄り、声をかける。そう、この二人は友達。前回の最初こそ、激しい戦闘を繰り広げていたが、その後わかりあい、ズッ友となった。


「大丈夫ですか!? 立てますか!? 今肩を貸します! 加賀、手伝って!」


「了解!」


 赤城と加賀はここじゃまた敵に見つかって危ないと思い、一番近い四階南館の会議室へと二人がかりで昇龍を運んだ。そしてそこを通る時、四階南館の廊下はクレーターだらけになっていたのを確認。その後、お互いの知っている情報を交換した。


「ええ!? 赤城ちゃんたちもあの人体模型に!?」


「ええ、なんとか無事に逃げられましたが」


「ほんと、あんなところに来なければ赤城と続きできたのにねえ〜」


「お楽しみ?」


「ちょっと加賀! その話はしないでください!」


「ごめんごめ〜ん! 口が滑っちゃった〜!」


 加賀はわざとらしく舌を出す。赤城は顔を赤らめて封じた。幸い、昇龍にはなんのことを言っているのかが理解できていなかった。昇龍の視線は赤城から加賀に向けられる。


「そういえば、そこの人誰だっけ? どこかで会ったような…….」


 昇龍と加賀は一応面識はある。あの結婚式のときだ。しかし、あまり昇龍は覚えていないようだった。


「私だって! 正義執行管理局ナンバースリー、加賀! トゲトゲの鉄球振り回してたあの可愛かった子だって!」


「あ、あの子か! っていうことは……敵?」


 やっと思い出したと思ったが、昇龍からしてみれば敵でしかない。元々、昇龍組を取り締まるためにあの場に現れた管理局。昇龍組と管理局が対立関係にあるのは間違いない。そんな中、昇龍自身と赤城は友達になった。本来なら両者にとっては許されざる関係。

 そして今、それが加賀にバレてしまう。


「敵だね。にっひひひひひっ! モーニングスターの餌食になるねえ〜!」


 加賀は手の指で空中を掴むかのようにこちょこちょと昇龍に向けていた。本気なのかふざけているのかは正直なところわからない。


「加賀。妃さんに対して物騒なことは言わないでください」


「はいは〜い。って、あれ? というか思ったんだけど、さっきから二人、妙に仲良いよね」


「……っ!?」


 バレてしまった。赤城は驚いた顔で固まる。


「おやおや、これはこれは、管理局に報告せねばなりませんなあ〜!」


「や、やめて! お願いだから!」


 それを武器に(おど)し始める。赤城はかなり焦って何とかしようと思った。しかし、加賀は初めからそのつもりはない。パートナーが困るようなことはしないと決めている。でも加賀の下心が少し困らせようとしていて、それに忠実になっていた。


「条件次第ではやめてあげてもいいよ〜!」


 赤城に耳打ちをする。すると、赤城は顔をだんだん赤らめ、呼吸も荒くなる。


「わ、わかりました……や、やれば……いいんでしょ……」


「くっくっく……おじさん物分かりのいい女の子は嫌いじゃないよ〜。って、最初から言うつもりなんてないんだけどね! あっははははははは!!」


 唐突に爆笑し始める。何が面白いのやら。それを真顔で眺める二人。これが管理局ナンバースリー、加賀。何を考えているのか全く読めない時が多い。そんな彼女のことは赤城が一番知っているが、一番騙されている。


「とまあ、こんなのが私のバディです。根はいい子なので仲良くしてあげてください。あなたもですよ、加賀」


「もちろん! でも、さっきの条件はちゃんとのんでね。やると言ったからには頼むよ〜!」


「ひ、ひどいですひどいです……! この悪魔! 詐欺師!」


 赤城は加賀を正面から軽くポカポカと叩き始めた。加賀はニコニコとして親指を立てていた。


「あんたらのノリについてけねえわ……」


 一体、加賀は赤城に何を吹き込んだのか。昇龍は少し気になっていた。

 昇龍の怪我は時間と共にだんだんと癒えていった。そんなこんなでしばらく体を休めていることにした三人だった。


「ん?」


 その時加賀はこの部屋の違和感を覚えた。空のコンビニ弁当に少し残ったペットボトルの水。この場所はちょっとした生活感のあるもののように感じた。コンビニ弁当の賞味期限も昨日の日付が書かれている。まるで、つい最近までここで誰かが過ごしていたかのような。しかし、今は夏休み。そしてここは学校。

 そんなはずはありえないのだ。

⚫︎東條隆 南館三階 廊下

⚫︎紫可憐 南館三階 廊下

▲昇龍妃 南館四階 会議室

▲赤城 南館四階 会議室

▲加賀 南館四階 会議室


天空城空 不明


七不思議怪異三つ解決(残り四つ)

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