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それは禁止ワードなんだが?

「それで――今回貰えるものは弁当か」


 あれから彼女はどこからともなく弁当を取り出し、僕にそれを渡した。

 それを食べながら話を進める。


「スーパーのお弁当とかは398円ぐらいでお手頃ですが、500円弁当もちょっとリッチな感じがして美味しいですよね」


「まあ、食べれないことはないが…(しぶ)くないか?」


 シャケにお惣菜(そうざい)とか、健康に気を使いすぎだろ。


「でも、上の人たちがこのお弁当を選ばなかったらずっとポテチ生活だったでしょう」


「やっぱりか。って、上の人たち?」


 これは、このリアル女が決めてるんじゃないのか。

 するとこいつは、自慢げに言った。


「全ての利益はこの上の人たちが決めているので」


「へえー。よくわからんが、そりゃどうも」


「いつも画面の中からみていたからわかりますけど、ここ1ヶ月、朝ご飯はいつも何を食べていました?」


「うすしおポテチ」


「昼は?」


「コンソメポテチ」


「夜は?」


「のりしおポテチ」


 自分の口からはなんとかポテチという言葉しか出てこなかった。


「でしょう。だからこそ、上の人たちからのプレゼントで500円弁当を提供させていただきました」


 思えばこいつの言う通り、ここ1ヶ月間、ポテチしか食べてなかった。


 別に、健康とかどうでもいいからな。

 死んだらそれまでの人生と思ってるし。


「てか、なんでポテチばっかり食べてること知ってるんだよ!?」


「いや、だから画面から――」


「あ、ストーカーだからか」


「勝手に納得しないでくださいよ!」


 これから僕はどうなってしまうのか。

 このリアル女に投資とやらをさせられるのか?

 そして、副業という金稼ぎをさせられるのか?

 わけがわからない。

 どうして僕がこんな――


「おにーちゃーん!今日こそは学校行くんだからね!」


「…」


 外でまた美沙が騒いでいた。

 僕は何も聞こえないぞ。

 聞こえない!

 聞こえないんだ!


「美沙さんがきたようですが…いいのですか?」


 彼女は声のボリュームを変えず、僕に話しかけた。


「おい!お前は黙ってろ!聞こえたらどうする!」


 僕はそれを小さな声で注意した。


「お兄ちゃん、誰かいるの?あ、まさか女!?学校も行かずに女を連れ込むとかけしからん!おばさんにチクってやるんだから!」


 ギャーギャーと外で騒ぎ出す美沙。

 おばさんというのはうちの母さんのことを言っているのだろ――


「って!それはまずいまずいまずいまずい!!母さんにこんなところを見られたら僕の引きこもり生活が終わるぞ!!」


「隆。美沙ちゃん来たわよー」


 そんなことはわかってますよ、お母様。

 僕はそれどころじゃないんですよ。


「あ、おばさん!ちょっと外に来てくれますか?」


 美沙が母さんを外へ誘い出す。

 本当にこのままだと――


「ちょ、美沙!やめ――」


「お兄ちゃんが部屋に女を連れ込んでまーす!」


 時すでに遅し。

 美沙が母さんに言った。

 このリアル女の存在を。


「美沙ちゃん、今日こそはあのバカを学校に連れ出すから先に行っててね」



 外で指の関節を鳴らす音が聞こえる。


「はーい!」


 美沙は諦めて学校に行った。

 それは良かった。


 だが、その足音はこちらに向かってくる。


「たーかーしー!!何学校に行かずに女連れ込んでんだー!?セフレか!?セフレでも連れ込んでんのか!?あぁ!?」


 母さんは激怒して禁止ワードを連呼しながら階段を登ってこちらに向かってくる。


 タカシアランドの危機――

 こうなったら、あれを使うしかないか…

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