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それも魅力なんだが?

 昇龍の家の前につき、僕は昇龍に挨拶をする。


「今日はお互い大変だったが、なんというか……楽しかったぜ」


 こんな日にこの言葉を使うのは場違いなのかも知れない。でも、楽しかった。そう思ったのは事実だった。

 そう感じるのは僕の頭が疲れでどうかしているのかもな。


「あーしも楽しかったぞ。色々やばかったがなあ」


 昇龍はニコニコと笑いながら言う。よかった〜! 僕だけじゃなかった〜!

 僕は後ろを振り返り、昇龍組と書かれた門を潜ろうとする。片手をあげて、「じゃあな」と言う。


 それに対し、「おう」と一言言って返事をしてくれた。


「あ」


 僕はあることを思い出し、後ろを再び振り返る。


「今度の夏休みさ、みんなを誘ってどこかにでも行こうと思う。お前も来いよ」


 それは今朝ふと思ったこと。みんなを誘って夏休みに行きたかった。それにせっかく仲良くなれたこいつを入れてみんなで行きたいなと思っていたのだ。


「え!? いいの!? でも、ほんとにあーしが行っても大丈夫なのか?」


「当たり前だろ。僕と話すやつはなんだかんだいいやつばかりだ。なんせ、このキモオタとの定評が高い僕と仲良くしているのだからな」


 あはっ……はははははっ……

 自分で言って何故か自分に刺さった。


「じゃあ、あーしもいーこおっと! 楽しみにしてるぜ!」


 その返事を聞き、再び後ろを向き歩き出した。僕は三歩進んで左手を広げあげ、言葉を出す。


「楽しみにしとけ。それと、これからもよろしくな」


 それだけ言うと僕は家の方向へと歩き出した。昇龍は最後に「お、おう……」と小さく言った。大丈夫だよな? 変なやつとか思われていないよな? 気持ち悪いやつって思われて……はもういるか。


 そう心の中で心配していると、別の心配事が頭をよぎった。それをあえて口に出す。


「あれ? 今何時だ。とりあえず母さんに連絡を……あれ? ……ん?」


 スマホを取り出し、画面のホームボタンを何度も押すが、真っ黒のまま。充電切れ? いやまさか。だって学校出た頃には八十%はあったわけだし、その後はほとんど触っていないから充電がなくなるわけもなく……


「ああ……!! あの時か……!?」


 思い出した。おそらく赤城との戦闘時、あいつを助けるために飛び込んだ電気の通った水溜りに触れた。

 それでもしやスマホが動かなくなったのでは……

 やばいぞこりゃ……ってまあ、これは美沙のとこのシゲ爺にでも頼んでまた直して貰えばいっか!

 ってそうじゃなくて! 本当にやばいのは、今が何時かを指してるってことで、時と場合によっては母さんの落雷が落ちること!

 それだけは避けねば……!!


 僕は眉を細め、目を大きく見開き、猛スピードで家まで走り出した。


 家の前につき、元気よく扉を開ける。

 いつも通り入ってもいつも通り怒られそうだし、ここは明るく接して許してもらおう。


「ただいまー、母さん!! いやー、どうやら今宵の夜は拙者を逃してはくれなかったみたいで――」


「たかしいいいいい!! 今何時だと思ってんだ、このバカ息子おおおおお!! 答え教えてやろうか! 十時半だぞ、十時半!! 罰として明日は食器洗い、風呂掃除、トイレ掃除、ついでにご近所さんに回覧板届けに行ってきなさい!!」


「いやあああああ!!」


 僕の淡い期待は的外れ。入るや否や、リビングから鬼の顔をした母さんが出てきて、腰に手を当てて顔を近づけて怒鳴りつけた。

 いやいや、明日はロジカルファンタジーのサマーイベントなんだぞ!?

 僕はイベント周回ですら常にランキング上位を維持しなければいけない、いわばロジカルファンタジーの申し子のような存在でもあるんだぞっ!!

 勘弁してくれよ、母さん!!


「隆も夜はパーリーピーポーしたかったんじゃろうな! がっはっははは!!」


「父さん、あんたも明日隆の手伝いしな」


「わ、わしもお!?」


 リビングから父さんともどきも出てくる。僕の意見に賛同した父さんも母さんに真顔で言われ、なぜか道連れとなった。


「シャルロットちゃんは明日、母さんとゆーっくり、喫茶店に行きましょ。家事はあの馬鹿どもに任せましょ」


「はい!」


 母さんはもどきに共感を求め、そのもどきは笑顔で答える。

 こいつら、僕と父さんをこき使って外食とはいい度胸してるじゃねえかっ……!!

 もう頭にきた! 僕は母さんに顔だけを近づけ、金剛力士像のような顔をして見せる。


「ふざけるな!! 喫茶店ってあの糖分も取れる店だろ! 僕も連れていけ!」


「あら、洗濯物もやってくれるの?」


 母さんは笑顔で言った。

 これ以上喋れば洗濯までやらされそうだ。


「すみません。僕が全部悪かったです……」


 こうして、僕の明日は潰れるのであった。

 今日は昇龍の意外な一面がわかってなんだかよかった。今まで怖い印象ではあったが、少し可愛いとこあるじゃん。優しいところもだな。

 敵である赤城に対してあんなにフレンドリーに接することができるなんて、やっぱりあいつはすごい。そういうところもあいつの魅力なのかもな。

 あいつとはこれからも仲良くできそうな気がする。

 でもあいつがコンビニの前で僕に言った言葉。




「あんたの妹、シャルロットって……何者なの……?」


「悪い、やっぱり今話したことは忘れてくれ。多分、あーしの気のせいだ……」




 もどきのことで言っていたこの言葉はなんだったのだろう。

 もどきは今まで僕のことを助けてくれた。何度も何度も何度も何度も。そんなもどきが僕に何か隠している?

 もちろん、些細(ささい)な隠し事なら問題はない。

 だけどもしそうではなく、それよりも何倍もやばいことだったら。例えば本当は投資業界側の人間とか。例えば本当は正義執行管理局側の人間とか。例えば本当は僕の命を狙う暗殺者(アサシン)とか。

 あいつに限ってそんなこと……

 考えすぎだよな。


 ――まさかな。

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