誰なんだが?
とりあえず状況を整理だ。突然入院し、もどきと話してたら謎の紫髪のロングヘアーのリアルな女。その女は僕のことを知っている。で?
「いや……あんた誰?」
「もしあなたが上条さんをあのような状態にした犯人ならば、どうやってやったと思いますか?」
こいつ、上条のことも……!?
「それはどういうことだ? それと、あんた誰?」
「いいから答えてください。上条さんのあの傷から見て、犯人はどのようにして痛めつけたと思いますか?」
蘭壽のことはこいつには言えない。誰かもわからない上、蘭壽のいる場所まで嗅ぎ付けられたらあいつからは何も聞けない。だとしたらここは適当に嘘と本当のことを交えて答えるまでだ。
「数発腹部を拳で殴るだろうな。というか、僕はその場にいた。犯人は殴って逃走したからな」
「そうですか。では次に芳月学園火災事件についてお聞きします。もしあなたが火災を起こした犯人だとしたら、どうやって起こしたと思いますか?」
「だからなんなんだよ、さっきから! あんたは一体何者だよ!?」
感情的になる。なぜこいつが一連の情報を知っている。もしかしたら、投資議会のやつらかもしれない。そこがわからないことには下手に答えることができない。
「いいから答えなさい! あの量の火をあなただったらどうやって起こしますか!? ガソリンですか!? 深夜にガソリンでも撒いたのですか!?」
すると、相手まで感情的になる。もう、わけがわからん。芳月学園火災事件って、あの数ヶ月前の火災のことだよな。
「あの量でのガソリンはありえない。僕なら魔法を使うな」
「なるほど。魔法というのは非現実すぎて納得がいかないが、これで全てが繋がった」
「え?」
「あなたは今、犯人のした行動を全て言ったとみた。つまり、あなたが一連の事件の犯人だ」
「ふざけるなよ! お前が今全て言わせたんだろうが!」
何言ってんだよ、こいつ。僕のはずがない。全て投資業界の連中がしたことだ。それになんなんだよ、さっきから!
「あなたがしたんです。芳月学園を全焼させたのも、天空城空の体を燃やしたのも、上条樹を痛めつけたのも、全てあなたの手自らやったのです」
「……っ!? お前、言っていいことと悪いことがあるだろうが!」
僕は立ち上がり、リアル女に近づいた。頭に血がのぼり、怒りが治らなかった。拳を作り、殴りかかろうとしたが、相手はリアル女。手に血が出そうなほど殴りたいのを堪えた。
「犯人の証拠はない。そして、あなたはどちらの事件にも遭遇しています。その場の関係者のほとんどに聞いたが、あなたではないとは言っています。よほど混乱していたのでしょう」
「あなたの言っていることはめちゃくちゃです! 私だって火災の時はその場にいましたし、犯人に捕まっていましたが、その時助けてくれたのが隆さんなんですよ!」
もどきも立ち上がり、牽制する。こいつの言っていることはめちゃくちゃだ。この際、何者でもいい。こいつだけは許さない……!
「かわいそうに。身内まで洗脳するなんて……今のあなたの感情はわかります。私のことが憎いでしょう。怒りが湧いてくるでしょう。いいですよ、さあ殴りなさい」
言われなくても今すぐに殴ってやりたい。だが、こいつを殴ったら男として何か大切なものを失いそうだ。
「どうしましたか? 怖くて殴れませんか? 友達を傷つけておいて私は殴れないんですか? そんなんじゃ、消えたシャルロットさんに見せる顔はありませんね」
「……っ!?」
こいつは今、踏み込んではいけないラインを踏み込んだ。僕がこの世で最も愛する人物をこいつは利用した。許せない。許すわけにはいかない!
僕は拳を相手の顔面目掛けて突いた。
「ダメです、隆さん……!」
「ただ、一つ言うとすれば……」
「うわああああああ!!」
「今のあなたは私には勝てない」
その瞬間、左手で拳を掴まれた。気がついたら僕は空を飛んでいた。気がついたら目の前に壁があった。気がついたら目の前が真っ暗になっていた。
ガシャンと大きな音が鳴り、僕は前のからの部屋の壁まで投げ飛ばされた。
「うはっ!!」
まだ回復していない腹部のせいで立ち上がることができなかった。
すると、僕の目の前にはいつのまにかそいつが立っていた。
「隆さんに、何するんですか!!」
もどきは走り出し、そいつに攻撃を仕掛けようとするが、今度は僕にあるものを向けた。
「動かないでください。動くと、彼の頭部を撃ち抜きますよ」
「くっ……!」
もどきはそれを見た瞬間、足を止めた。拳銃。それも警察官が使うやつよりひと回り大きいハンドガン。おいおい、日本の銃刀法違反はどうなってんだよ……
「申し遅れました。私、正義執行管理局、管理局局長ナンバーワン、紫可憐と申します。以後お見知り置きを」
訳のわからない言葉が頭を巡回した。頭が追いついたのは、その約十秒後だった。
異世界人の次は、どこかの管理局かよ……