扉を開けたんだが?
「それと、副業をしなかった場合も、バングルが爆発しますのでご注意を。今回だと、6ヶ月以内に体重を50kg減量ですので、それを放棄した場合…ドーンッ!ってなりますね」
彼女は笑顔で両手を上にあげた。
爆発を表現しているとでもいうのか?
いや、そんなことよりも――
「死ぬ…?痩せないと僕は死ぬということなのか…?」
「ま、まあ、そうなりますね」
死ぬこと…つまりそれは、ロジカルファンタジーができなくなるということ。
そして、もう2度とシャルロットたんに会えなくなること。
そんなのは嫌だ…
「嫌だあぁーーーーーーーーーー!!」
「ちょ、隆さん!?」
彼女の制止も聞かず、僕は部屋の扉を開けて外の世界へ出て走り出した。
死にたくない!
死にたくないんだ!!
「あぁーーーーーーーーーー!!」
「え!?隆!?」
家を出る前に母さんと思われる声を聞いた。
おそらく、1ヶ月も部屋から出なかった僕が外に出たことに驚きを隠せないのだろう。
「あぁーーーーーーーーーー!!」
「あぁーーーーーーーーーー!!」
「あ、帰ってきました」
家に帰り、ドアを開けて部屋に戻ると、さっきのリアル女がまだいた。
あれから30分。
走りに走りまくった。
「それにしても、たった30分で随分と体つきが変わりましたね」
「そうか?」
自分ではわからないが、体がものすごく軽くなった気がする。
そして、ふとスマホを見た。
(副業達成)と書かれていた。今の一瞬で50キロ痩せたってことか。
「見たか!これが僕のシャルロットたんへの愛の力だ!!ムヒッ!ムヒヒヒヒヒヒッ!!」
「すごいです!さすがは私の隆さんですね!」
彼女はパチパチと拍手をして喜んだ。
なぜ喜ぶのか理解不能だが。
「黙れ!僕はシャルロットたん以外の誰のものでもないんだぞ!ていうか、お前がいなければこんなに走ってねえよ!」
「まあまあ、逆を言えば私がいたからさらに魅力的な隆さんになれたんじゃないですか」
「そ、それは…」
確かに否定はできなかった。
こいつがいなければ一生痩せようとは思わなかっただろう。
とはいえ、命をかけられたわけなんだがな。
「ではこれが、今回の資産分の1000円ですね」
彼女はポケットから千円札を取り出すと、僕の手を握り、それを渡した。
「これはどのように使おうが僕の勝手だったよな?」
「そう…ですけど」
僕にお金が回ってきたら必ずやることがある。
「だったらやることは一つだ」
「一つ?」
「課金さ!」
僕は椅子に座り、パソコンの電源を入れ、ロジカルファンタジーのアイコンをクリックした。
ウイルスぐらいどうなってるだろうと胸を弾ませていた。
だが、世の中はそんなに甘くはなかった。
「嘘…だろ…?」
そこには映るはずのシャルロットたんのアバターがなく、透明に映っていたのだ。