無事だったんだが?
我はしばらくすると、学びの場へとたどり着いた。だが、ここもいつラグナロクになるかわからない。だからこそ、その前にこの呪いを解除しなければ……
「おはよう隆。今日はずいぶん突っ込みどころの満載な服を着てるね」
椅子に座っていると、青木少年上条が声を掛ける。こいつが我が呪い解放の鍵となるやつか? いや、それはまだわからない。まずは勘づかれないように遠回しに聞く。
「貴様、最近悩みとかあるか?」
「悩み? ないよそんなの」
「そうか。我は魔王軍を倒すために今は苦戦中だ」
時期にあるであろう、ラグナロク。あれを止められるのは我しかいない。民を傷つけないため。そして魔王軍を倒すためには我は――
「隆。なんかおかしいよ。お前、いつものあの調子はどうした!? 僕はいつものお前が好きだったんだ!」
上条は突然怒り狂い、我に何かを呼びかける。それを見たのは二度目だった。何を言っているこいつは。力の解放ぐらい、当たり前のことだ。
「確かに4年の時が経った。だが、解放する時が来たんだ。貴様も時期にわかるだろう。我の力に――」
「こんなの、隆じゃないよ……」
そう言うと上条は自分の席に座り、離れていった。その表情は少し悲しみを浮かべているように見えた。何がそんなに悲しい。まさか! 女神の加護が足りていないのか!?
「少し見回りに行ってくる! 魔王軍が攻めてこないうちに!」
我は席を立ち、大きな声で宣言をした。視線が相変わらず冷たい。あの時と同じだ。だがいいんだ。我は孤独に戦う闇の勇者。ガウェインと黒竜の力を宿っているから嫌われていても仕方がない。だが、いずれは民を救い、この世界の崩壊を止める。
「我しかこの世界を救えるのはいないんだ……」
部屋の扉を開け、廊下を歩くことにした。頼むから魔王軍よ、責めてこないでくれ……
どうやら、廊下にはまだ魔王軍の姿は見えないようだ。だが油断はできない。奴らの力は未知数。しかし、この邪気眼を隠す眼帯だけは外してはならない……世界に渦巻く魔力の供給に支障が出かねないからな。そしてあの眼帯は封印が解かれるのを抑える効果がある。
「隆さん! こんなところにいたんですか!」
すると、正面から人が歩いてくる。まさか、魔王軍!? 我は構えをとり、黒竜が暴走しないように右腕を抑え、構えをとる。
「なんだ、さっきの女か」
魔王軍かと思ったら、先程の白髪の女もどきだった。全く、紛らわしいことをしてくれる。
「隆さんの友達といえば、私、美沙さん、上条さん、ムキムキさん、山田さん、伊集院さん、熊倉さん、そして天空城さん。この中で怪しい人といえば――」
闇の勇者は闇の勇者らしく、孤独に戦うのがお似合いだ。
「やめろ! 我は孤独な闇の勇者! 我に戦友などいらぬわ! それこそがこの闇の勇者に定められし宿め――」
「あれ? もしかしてあなた、東條?」
久々に聞く声。そんな気がした。後ろから聞こえる声に、ふと振り向いてしまう。
「貴様は……! 天空城空……!?」
「え!?」
天空城空。かつて、投資議会の一人である鉦蓄に全身火傷を負わされ、重傷を負ったやつだ。確か、病院で意識不明だったはずだが、傷一つついていない。それに、こいつがどうしてここにいる?
「久しぶりね。2ヶ月ぶりといったところか。元気にしてたかしら?」
「なぜだ? 確定的に明らかお前は、全存在ブレイズスパイクして、病院にいた、と預言書にもそう書かれているはずだ。これは、真実に基づいた幻想――」
かの魂に、あれだけの戦闘で負った傷を負えば戦いの傷痕も残骸、ファイナルファンタジーの戦いの傷痕に弄ぶ最後かもしれないだろう。
「こいつは何をいっているんだ?」
「ああ、隆さんのことは放っておいて大丈夫です。それより、ここに来るまでに何があったか教えてくれますか?」
「なぜだかわからないが、体が今朝突然回復したんだ。今はどこも体は悪くないし、回復したのならすぐ学校に行かねばと思ってきてみたんだが」
太陽が上りし時、副業の幸運の食卓から毀れ落ちた賛礼が届かこの混沌の時代に、無力であることは許されなかったのか。
「あ、そういうことでしたか……」
もどきは何かを理解したのか、頷いた。ふっ。我と同じ考えに至ったというわけか。
「それよりも東條……お前に伝えたいことがある……」
天空城は自分の指と指を絡ませてもじもじし始めた。それに顔も赤い。なんだこいつ……はっ……!? まさか、魔王軍にノルヴァ級の炎の奇蹟を星の命運をかけられたのか――!?
「お前が好きだ! 付き合ってはくれないか!?」
「え……? えええええええええ!?」
もどきはかなり衝撃を受けていたようだが、これも女神パドリ=ヌトはかくのごとく語れり。この者らの我の信じる道を受け止めるのが最優先だ。