封印が解かれたんだが?
「お兄ちゃーーーん! シャルロットちゃーーーん! 学校に行くよーーー!」
朝っぱらからうるさい声が家中に響く。全く、近所迷惑もいい加減やめてくれ。僕が注意でもされたらどうする。だが、あいつも昔からの腐れ縁。まずは美沙からだ。
「美沙さん、来たみたいですね。どうします?」
もどきは学生服を着て準備を整えていた。かという僕も着替えは終わっていたが、することがあった。ちなみに、部屋は同じだが、着替えるときは片方ずつ交代で部屋に入っているから理性は保たれている。
「今行くよ。だが、少し待ってくれ」
僕はカッターを引き出しから取り出し、冬服のかけられているところまで歩いていった。そして、黙って無作為に冬服を切り裂いていった。
「え!? 何やってるんですか!?」
「これも作戦だ。お前は下の救急箱から眼帯と包帯を取ってこい」
届きに指示を出して僕は鞄を広げる。
「何か策があるんですね。わかりました」
もどきは頷くと、下へ行き救急箱を取りに行った。まさか、またあの力を解放する時がくるとはな……
「さて、教科書詰めるか!」
おい、今どこかで僕のこと笑っただろ? 僕はこの作業を朝にやる派なんだ。小さい頃、親には夜のうちにやっとけとしつこく言われたが、それは幼少期の話。朝の方が頭が働くからな。
しばらくして支度が整い、もどきと下に降りようとする。階段から見下げるが、母さんの姿はなかった。おそらく、キッチンにいるんだろう。
「よし。 母さんはいない。 今のうちに――」
「私ならここにいるけど」
「ひぃ……!」
すると、いつのまにか母さんは階段の一番下にいた。僕は小さな悲鳴をあげ、もどきはニコニコしている。いや、笑ってる場合じゃないだろ!
「おはようございます、お母様」
「おはよう! 母さん!」
「おはよう、シャルロットちゃん。たかしいいい!なんだその格好は! その格好でまさか学校に行くとか言わないでしょうね……」
母さんはだんだん階段を登ってきて、めちゃ怒っている。わかってる。わかってるんだ! 高校二年生にもなって眼帯や包帯をつけ、さらにこの夏真っ只中に冬服を着るなんてどうかしてるよね、母さん!
「今すぐ脱ぎなさい!」
母さんの手が僕に届こうとする。それを僕は必死こいてよける。
「いやだね、くっ……! ここは早くも片腕の力、ガウェインを解放するしか!」
僕は腕に巻かれた包帯を取る。その時、心臓が大きく跳ね上がる。ううっ……! かなり反動は高い。今は隆と闇の勇者の狭間。だがこれで時期に我の体はガウェインの加護により、力が漲るだろう。
「訳のわからんこと言ってないで、早く脱ぎなさい!」
マザーの手が千手観音のように見える!早い!だが、ここで触れられたら副業が失敗し、殺される。そんなの……ごめんだ……!
「もどき! 下に行って先に玄関に待ってろ! あとで合流する!」
「はい!」
さて、追い込まれたな。二階もそう広いわけではない。隆アイランドはもう母さんの陣地内。我は左右を見渡す。我が残されている道といえばあれしかない!
我は思いっきり左にある窓に突撃して窓ガラスを割って空を飛んだ。
「隆! 待ちなさい……!」
母さんは手を伸ばす。だが、間一髪で当たらなかった。残り数ミリ伸びていれば僕の負けだっだろう。
「我の勝ちだ、我が母よ……!」
そのまま下に落下していく。打ち所が悪ければ間違いなく死ぬ高さ。だが、我は過去に竜を倒した経験がある! このくらいの衝撃、耐えてみせる……!
「いったあああああ!!」
ドンっとものすごい音が鳴って、背中にかなりのダメージを負う。下が庭の芝生でまだ良かった。一か八かの賭けでもあったが、無事生きてる。こうしちゃいられない。行くぞ、闇の勇者!
ここから玄関までは家半終盤。ちなみに家は普通の一軒家だ。行けるのか、我! この世界ではまだ体が世界に慣れていないため、走れるかどうか。いや、別に運動不足とかではないぞ! 断じて違う!