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青春という名のアオハルなんだが?

 こうして僕らの長いようで短い修学旅行は終わり……ん?短いようで長い?まあいいや。とにかく終わり、今はバスに乗っている。

 バスに乗る前、集会のようなものがあり、そこでもどきからはトランクケースを受け取った。ここにおそらく一千万円が入っているのだろう。

 もどきは朝起きた時には鞄の横に出現したと言っている。投資業界の連中か。

 もどきにはある程度説明をした。最初はこれだけの大金だからかなり危ないことをしたのだと思い、僕の話を聞かず説教ばかりされたが、なんとか一から百まで説明したら納得してくれた。


 今思えば、なんらかの副業を出してクリアすれば利益が手に入る。そう思った斬賀は無理やり僕と対戦させた。意図はわからないが、こんなところだろう。

 にしてもかなり重い。よくもどきはこんなものを部屋から持ち出せたな。


「ねえ、その中には何が入ってるの〜」


 隣にいる上条が声をかける。


「京都で買った八橋百個セットだ」


 適当な嘘をつく。どうせこの馬鹿に言っても信じるだろう。


「京都に行ったの2日前でしょ? 昨日までそんなの持ってなかったじゃん」


 流石に通じないか。こいつもただの馬鹿ではないことがわかった。そしてもうこの話題には触れて欲しくないんだが、上条くん。


「あ、もしかして一千万円入ってるでしょ!」


「……なっ!? おま! どうしてそれを!?」


 こいつには言ってないし、中身を見られた覚えもない。


「え? ただの勘だけど? もしかしてあたった?」


 上条は不思議そうに首を傾げる。

 なんだ、勘か。焦って損した。


「あれ? もしかして図星!? 図星なの!? 先生! 東條くんが一千万円を修学旅行に持ってきて――」 


「おい、馬鹿!!」


 すると、当然静かなバスの中、騒ぎ立てる上条に全員の注目が集まる。しばらくするとみんなが笑い始めた。当たり前だろ、信じるわけがない。


「東條、お前修学旅行に一千万円なんか持ってきちゃダメだろ。三万円までって言っただろ」


 男性の教師が反応して笑いながら言う。それを聞いた他の奴らはさらに笑い始める。信じてなかったのが幸いっちゃ幸いだが、ヒヤヒヤする。


「うるさいぞ、東條、上条。俺に構って欲しいからか知らんが、昼寝の邪魔をするな」


 上条の横にいる伊集院が腕を組み、苛立っている様子だ。


「なんだと、伊集院! 修学旅行を楽しんで何が悪いんだ!」


 前にいるムキムキが反応をする。あれ? なんかこれ、デジャブ?


「黙れ筋肉ダルマ。限度があるだろ。俺に迷惑をかけるなと言っているんだ、わからんのか?」


「誰が筋肉ダルマだ!」


「ムキムキくん、落ち着いて! あーもう! どうすれば!」


 山田がムキムキを静めようとめちゃ必死だ。あーあ。けど、なんだかんだで楽しかったのかもな。この修学旅行も。


「ま……、少……有意義……時間……な……かもな……」


 伊集院は窓の方を見て顔を隠し、ぼそっと何かを呟く。お前もそう思うんだな。僕らは少し似ているよ。元は孤独同士だった。だけどこうやって今は仲間がいる。それが今はこうやって集まっているんだから。


「ふふっ。みんな仲良くてうちも嬉しいよ」


「ですね」


 熊倉ともどきも笑顔になる。

 青春。それは、青い春と書いて青春と読む。アオハルなんて言ったりもするな。そんな言葉、僕には似合わない。そう思っていた。だけど、こうやって友情を深める行為もたまにはいいじゃないか。

 これが青春。これが、アオハルなんだ!!

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