副業をしないといけないんだが?
「副業というと、隆さんは何を思い浮かべますか?」
「知るか!そんなことより、この輪っかを外せ!」
こんな奴の質問に答える義理もなく、バカのひとつ覚えのように外すように言う。
いや、この際バカでもいい。
こんなものをつけていたらどこかの悪の組織に思われるし、シャルロットたんにも変な印象を与えてしまうじゃないか!
「外すことは今はできません。とりあえず、話を進めますね」
「ふざけんな!」
というより、このバングルとやらはいつのまに僕の手首に巻かれたんだ?
巻いたとしたら誰が?
こいつか?
いやでも、こいつが来る瞬間で巻けるはずがない。
ならば一体――
「先程、隆さんは資産を私に投資してくれましたが、資産は有限です。そこで出てくるのが副業です」
僕の考えを遮るように彼女は話を進め出した。
クソっ!
無理にでも聞かせる気かよ。
僕は呆れて目を瞑る。
「副業の説明をしますと、日常生活で与えられるさまざまなミッションをこなすと資産を獲得することができます。資産を獲得し、私に投資をして利益を得る…こういった流れが投資システムの醍醐味というわけで――」
「副業? 冗談じゃない」
「え?」
僕は瞑っていた目を開き、この女と目を合わせる。
「僕はそんなことはやらない。お前のごっこ遊びにもそろそろ飽きてきた。さっさと帰って学校に行く準備でもし――」
すると彼女が持っている僕のスマホが鳴り出した。
ロジカルファンタジーのレベルアップの音を着信音にしている。
この音を聞くだけで全てのストレスが一瞬だが吹き飛ぶ。
これが、至福のひとときというやつなのか。
「返せ」
スマホを返すよう要求をした。
「どうぞどうぞ!」
彼女は嬉しそうに僕にスマホを渡す。
何か、嫌な予感がしつつも、スマホを受け取り、中を確認した。
(8ヶ月以内に体重を50kg減量:1000円)
「……」
唖然。
まさに、今の僕にはその言葉がお似合いだろう。
何もいうことができず、その場に立ち尽くした。
「それと、言い忘れていましたが投資をするかしないかは隆さんの自由ですので。そのお金を私に投資してもよし!自分のお金に使ってもよし!ですね!」
もう何を言っているかわからない。
頭がパンクしそうだ。
「ちなみに、純資産とは、対象の資産から負債を差引いた分が、純資産というわけです。純資産とはまあ、余ったお金という解釈でいてください」
「……」
もうやめてくれよ、なんでそんなに僕を追い込むんだよ…
冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろうが……