未亡人
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短いですが、楽しんでいただければ幸いです。
夫を亡くして六年が経つ。今、決死の顔で私に何かを伝えようとしているこの人は夫を亡くしてから三人目に好きになった人。前の二人は、好きだったけれど再婚する気にはなれなかった。お別れするときも、二人とも同じことを言って私の前から去っていった。
「君は前の旦那さんが忘れられないんだね。」
確かに、夫を忘れたことはない。けれど、私は私なりに二人のことを心の底から愛していた。それが伝わらなかったということは、悲しいけれど私にはもう再婚はできないものだと思っていた。
今私の目の前で必死な顔をするこの人は、そんな私を、それこそ本気で愛してくれているらしい。
「僕と結婚してください。」
「私でよければ」
こうして私は、二人目の夫を得た。
「君が前の夫のことを愛していることは知ってる。忘れろとも言わないよ。けど、僕と一緒に幸せになってほしい。きっと、前の旦那さんも君の幸せを一番に願っているよ。」
「ありがと。でもね、私の旦那はそんな良い人じゃなかった。きっと、今頃顔を真っ赤にして怒って、拗ねてると思う。俺のことを忘れるのかー!って。けどね、それでも私はあなたと一緒にいたいの。あなたの前に私が愛した人がいたことを忘れてとは言わない。けど、私はあなたと一緒に幸せになりたい。」
冬の夜、寒空のなか二人並んで家路につく私たちを照らしているのは、まんまるのお月様だけだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
私の物語が少しでもあなたの勇気になれば、これ以上ない喜びです。
寒いので、お身体にお気をつけて。
ノリミツ