93 やさしいくみちゃん
くみちゃんは、おかおがしわくちゃの、やさしいおっちゃんだ。とてもたよりになる。
やさしいおっちゃんのくみちゃんは、あたしがないていると、あたまをやさしくなでてくれる。
「おぉ、よしよし。なみちゃん、どうしたんだい? 目が真っ赤だよ?」
「おとなりのおにいちゃんに、『おまえはぶさいくだ』っていわれたの」
あたしはそのときのことをおもいだして、またなみだがでてしまった。
おかあさんに、『おんなのなみだはきやすくみせちゃだめだ』っていわれてたのに…。
「なんてこった! なみちゃんはこんなにも可愛くて良い子なのに!」
くみちゃんはすごくおどろいたかおであたしをみた。
それからまた、あたまをなでてくれた。
「大丈夫だよ、おっちゃんがそのお兄ちゃんにきちんとお話して、なみちゃんが可愛いことを教えてあげるよ」
「ほんとー?」
「本当だとも、任せておきなさい」
くみちゃんはむねをどんとたたいて、やくそくしてくれた。くみちゃんが、もうあえないおとうちゃんにみえた。
「くみちゃん、ありがとう」
だれかをよびにいったくみちゃんのせなかにむかって、あたしはおれいをいった。
「おい! 話は聞いていたな!」
「うっす! もちろんです、組長!」




