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4S  作者: 半信半疑
93/101

92 いかないわけにはいかない

「どうしても行くつもりか?」

「父さん…。あぁ、止めてくれるな」


 俺はどうしても行かないといけないんだ。

 あの、約束の地へ。


「お母さん、お父さんたち、何を話してるの?」

「男同士の馬鹿な話よ」

「馬鹿とは何だ。馬鹿とは」

「そうだよ母さん。俺達にとっては大事な話なんだよ」


 自分の人生がかかってるんだ。


「男はいつもそう言う。真面目なことも、馬鹿なことも」

「お母さんが何か語り出した……」

「母さんにも色々あるんだ」


 父さんが遠い目をしている。

 俺は察して、深くは言わなかった。

 代わりに別れの言葉を紡いだ。


「じゃあ、行ってくるよ」

「気をつけてな」

「あぁ」

「お兄ちゃん、いってらっしゃい」

「気をつけるのよ、吉彦よしひこ


 俺は玄関のドアを開けて、広い世界に出た。

 後ろは振り返らなかった。



◇◆◇



「それで、お兄ちゃんは結局どこに行ったの?」

「コンビニだ」

「お父さん…」

「言ったでしょ、男ってのはそういうもんよ」


 便利すぎるがゆえに。

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