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8 ネコリンガル
家を掃除していると、面白いものが見つかった。
ネコリンガルだ。
四角い機械で、見た目は一昔前の携帯電話のよう。
一時期流行ったことがあったから、試しに購入したんだろう。
俺の家には、一匹の猫がいる。名前はタマ。白い毛並みの猫だ。五年ほど一緒に暮らしている。
見つけたネコリンガルをいじっていると、足元にそのタマがやってきた。丁度いいので翻訳してもらおう。
俺はネコリンガルをタマに近づけた。
「にゃー」
ピコンという電子音の後、ネコリンガルの液晶画面に文字が表示された。
『おなかへったんだけど』
壁時計を見ると、午後一時を過ぎていた。
俺はタマに謝った。
「ごめんな。すぐ飯をもってくるからな」
「にゃーご」
ピコン。
『はやくしてちょうだいね』
今でも十分使えるな、コレ。今度、野良猫の声を翻訳してみよう。
立ち上がりながら、俺はそう思った。