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77 バナナ、『おやつ』を欲す
バナナは不満だった。
「どうして、私はおやつに入らないんだ」
甘みも満腹感も備えている自分がおやつに含まれないという事実。
そのことは、バナナの誇りをひどく傷つけていた。
甘味だけでなくあらゆるものが圧倒的に不足していた昔ならいざ知らず、現在は飽食の時代。ただ甘いだけでは勝ち抜けない。おやつには、数えられない。
バナナは自問する。
ならば、どうする?
このまま黙って、『おやつ』の称号を得られぬまま、指をくわえて他者を見ているか?
「否、断じて否だ」
何か、行動を起こさねばならない。その果てに、『おやつ』という称号は、我が身にもたらされる。
バナナは覚悟を決めた。
「私はおやつになるぞ。その為ならば、何だってやってみせる」
バナナは目の前にあった受話器を握った。ある番号にかけ、そして相手とつながった。
「もしもし、甘味の王か。貴殿に話がある」
『バナナか。いいぞ、話だけでも聞いてやろう』




