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66 サムはもういい
娘が何処からか人形を拾ってきていた。
ぼろぼろの人形で、目玉が片方取れている。男性型の人形のようで、顔つきはどこか男らしい。
勉強の合間に、一人と一体で遊んでいるようだ。
その様子を扉を隔てて盗み見ていると、どうやら「サム」と名付けて話をしているようだった。
あの子も小学四年生。来年は五年に進級するというのに、まだ人形あそびをしているようでは恥ずかしい。
私は、あの子の為にも心を鬼にして「サム」を捨てることにした。
あの子が学校で家にいないうちに、部屋からこっそりと「サム」を誘い出し、遠くのゴミ収集場所に置いておいた。
「いつもあの子の話を聞いてくれてありがとうね。でも、もうお別れよ。今まで本当にありがとう」
そうして、私はその場を後にした。
あの子専用の、学習プリントに載せる問題を考えながら。




