62 退屈は人を◯◯
駐車場を監視するアルバイト中。
私はとても眠かった。前日に徹夜をしていたからだ。
しかし、たとえ徹夜していなかったとしても眠気を催していたに違いない。
何の変化もないモニターを見つめ続ける、退屈なお仕事だから。
目の前にはたくさんのモニター。何の変化もない駐車場内を映している。私はこの光景を監視しなければならない。
けれども、私の視界は駐車場を映すことなく、酷く揺れていた。
いや、揺れているのは頭だった。
うつらうつらしてはビクッ、という絶賛ジャーキング状態だった。
夢に片足突っ込んだまま、私は横に目をやった。
そこには、同じくアルバイトの人が一人。彼も目を閉じている。
いかん、これでは誰もモニターを見ていないじゃないか。
私は、目を無理矢理開けてモニターを見た。同時に、目を閉じている彼に殺意が湧いた。
(私が起きているのに、何でこいつは寝てるんだ…?)
私は怒りを抑えつつ、彼の肩を揺すった。
「ちょっと、起きてくださいよ」
若干込める怒気。
しかし、彼は起きなかった。私は彼の口元に耳を寄せた後、脈を測った。
「し、死んでる…!」
眠気など何処かへ走り去っていた。
私は何もしてない。
そう、退屈が人を殺したのだ。




