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4S  作者: 半信半疑
59/101

58 チョコの渡し方

 季節のネタをご用意しました。

 二品続けてどうぞ。


 二月十三日の放課後。夕日が辺りを橙色に染めている。

 私は下校間際に、彼のロッカーにこっそりとアレを忍ばせた。

 正面から渡すのは恥ずかしかったから。

 たとえ彼女でも、手渡しは恥ずかしいのだ。


「喜んでくれるかな、佐藤くん」


 頬を緩ませつつ、学校を後にした。



◇◆◇◆◇



 二月十四日の朝。運命の日。

 この日は、義理やら本命やらの言葉を冠するアレが地に溢れる。

 俺には千代子という相手がいるので、ゼロ個ということはない。


「おい、佐藤」

「何だ、須藤」

「お前の彼女に言ってくれないか。『場所をきちんと確認しておくように』って」


 一限の教科書を取るために出た、廊下のロッカー前。

 朝っぱらから話しかけてきた須藤の手には、赤い紙で包装された四角い箱があった。

 それを見て、すぐさま事情を察する。

 俺の彼女は恥ずかしがり屋で、そしておっちょこちょいなのだ。


「あぁ、千代子の奴が間違えたのか」

「みたいだな」

「分かった、ちゃんと言っとくよ」

「頼むぞ」


 独り身の須藤には悪いことをした。

 千代子には反省してもらわなければなるまい。


「朝からきついな。甘すぎて口から砂糖を吐きそうだ」


 何だ、「佐藤だけに」とでも言うのか?

 喧嘩なら買うぞ?


 …まぁしかし、今日の所はこちらが悪いので何も言わないが。

 というか、須藤はおそらく、杉田さんからもらえるので心配しないで良い。


「あの、須藤君、ちょっといい?」


 ほら、噂をすればなんとやらだ。


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