54 絶対遵守の抜け穴
「壊される静寂、連鎖する爆音」と同じ時期に書いたものを少し修正した。
いつ書いたのか、正確な日付は忘れた。
『命令を強制的に実行させる力』というのを野良犬からもらった。
相手の目を見ながら命令すると、相手はその命令を実行するらしい。
都会はすごいとこなんだな。こんな奇妙な力をくれるなんて。
犬が日本語を話せることにも驚かされたけれど、実際に命令して頭を撫でさせた時はもっと驚いた。
野良犬が「俺の頭を撫でろ」って渋い声で命令すると、通りすがりのお姉さんが野良犬の頭を撫でたんだ。
こんな凄い力をおいらにくれるなんて…。
野良犬さn、いや、野良犬様は本当にいいのだろうか?
「あぁん? 俺様はもう十分堪能したんだからいいんだよ」
なんていい野良犬様なんだ。
そうしておいらは、野良犬様から力を受け継ぎ、初の命令をそこらへんにいたお姉さんに下した。
「あんのもっちわけなかんけんど、おいらのかんぶいばなぜてくれんけ?」
お姉さんは、理解できないという顔をして、どこかへ走り去っていった…。
な、何故…。あの力は嘘だったのか?
おいらは肩を落としてアパートに帰った。
方言は出鱈目。
「地の文と台詞の差が激しい」というツッコミには対応しておりませんのでご了承ください。




