44 朝の占い、半信
「牡羊座が12位…。最下位だと?」
朝食を摂りながら見ていた星座占いの結果だ。
牡羊座が12位になってしまった。
怪我をする可能性があるらしい。由々しき事態だ。
「でもまぁ、所詮占いだしな」
こういうのは気の持ちようだろう。
深くは考えないでおこう。
「とりあえず赤いネクタイでもしておくか…」
一応だ、一応。
それから、準備を整えて家を出た。
いつも通りの出勤風景だった。
◇◆◇
歩いて地下鉄に向かう。
そして、いつものルートで駅の階段を下りていた時だった。
「うぉっ!」
私としたことが足を滑らせてしまった。
現在位置は階段の上の方。下にはまだ、何十段も残っている。
(このままじゃあ…)
やけに時の流れがゆっくりになった気がした。
これは、最悪死ぬかもしれない。私はそう覚悟した。
その時だった。
「危ない!」
私の左側から人の手が伸びてきた。
その手は、私を落下から助けてくれた。間一髪だった。
「大丈夫ですか?」
顔を向けると、スーツを着た筋肉質の男性が心配そうにこちらを見ていた。
「え、えぇ。大丈夫です
助けていただいてありがとうございます」
「いえいえ、間に合ってよかったです。
でも、本当に良かった。
あなたのその、赤いネクタイに気を取られていなかったら、助けられなかったかもしれません」
眩しい笑顔の男性が言った。
私は視線をチラと胸元に向ける。
そこには赤いネクタイがあった。
生存ルート。




