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31 最後くらいは本当のことを
「これで最後だろうから、正直に話すよ。
私は、この世界の人間じゃないんだ。銀河歴1984年に完成した時空間転移装置、通称・【どこでも行ける君】の機械トラブルによって、現在に飛ばされてきたんだ」
目の前にいる髭を生やしたおっさんは、真面目な顔でそう言った。
「…ごめん。いきなりこんな話をしても信じられないよな。当たり前だ。君にとっては意味の分からない単語ばかりだし、ぶっとんだ思考の持ち主だと思われても仕方ない」
顔を俯かせるおっさん。
事情はよく分からないけれど、その姿は悲しそうに見えた。
「何だかよく分からないけれど、元気出せよ、おっさん」
一応、励ましの言葉をかけてみた。
「ありがとう、ありがとう」
おっさんは涙を流している。
やがて、おっさんは泣き疲れたのか眠ってしまった。
それを見計らって、一人の女性が俺の隣に立った。
「こんな嘘話に付き合ってくれて、本当にありがとう」
おっさんの娘さんは、疲れた顔で笑っていた。




