30 砂糖回収課
砂糖がどうやって生まれるか、知ってるか?
『知らない』
…そうか、知らないなら教えてやろう。
あのベンチを見てくれ、何が見える?
正直に答えてくれ。
『カップル』
…それは本気で言っているのか?
お前の素直な気持ちを言葉にして欲しいんだ。
『人前で恥も外聞もなく、愛を囁き合うバカップル』
そ、そうだ。お前の言う通りだ。
あそこに見えるのは、バカップルだ。
そして、彼らが放つあの空間を、私たちは『甘熟空間』と呼んでいる。
いいか、あのバカップルをよく見ていろ。
『奴等、接吻をしてやがる! なんて破廉恥な!』
なんてうらや…、ゴホン。そうだな、とても破廉恥だ。
しかし、今注目すべきはそこじゃない。
ほら、見えるか? 奴等の頭上だ。
『何か、粉みたいなものが飛んでる』
見えたか。あれが私たちが回収しなければならない砂糖だ。
いくぞ新人、遅れるをとるなよ!
◇◆◇
「そういえば、今日は新人と隊長が組む日だったな」
「独り身にとって、辛い光景を見なければならないんだな」
「仕方ないだろ。それが私たちの仕事だ」
「そうだな。まぁ、『甘熟空間』を邪魔できるのがせめてもの救いか」
「あれがなければ私は血を吐いていた」
「「あっはっは」」