29 豚肉とキャベツと一家団欒
キャベツは激怒した。
必ず、かの邪知暴虐な豚肉に天罰を下してやろうと決意した。
「おれはおこったぞ」
そして、その決意のまま、肉の神殿へと足を踏み入れた。
神殿の中はひっそりと静まり返っていた。しかし、ぐつぐつとした熱気が渦巻いている。豚肉に虐げられた者たちの怨嗟の声だとでも言うのだろうか。
「やつはどこにいるんだ?」
キャベツが憤怒の形相で探していると、大きな広間に出た。
そこには豪華な椅子が一脚。
「よく来たな」
椅子には豚肉が座っていた。
「いたな! ぶたにく! おれはおまえをたおさなければならない!」
「そうがなるな、キャベツよ。どうせ我らに時間などないのだ。最後の時くらい、静かに過ごさせよ」
「さいごのとき? いったいなにをいっているんだ!」
「ふむ、お主には早かったか。しかし、これは抗えぬ運命なのだ」
そして、その時はやってきた。
「な、なんだ!? なにをする、そいつをはなせ!」
「ではな、キャベツよ。一足先に行ってしまうが、お主はゆっくり来るといい」
豚肉は連れ去られてしまった。
◇◆◇
今日のばんごはんはおなべだ。しゃぶしゃぶだ!
「さとる、お肉ばかりじゃなくて野菜も食べなさい!」
「えぇー、だってー」
「ははは、野菜も食べないと大きくなれないぞ、さとる」
そうは言うけどお父さん、キャベツがおはしをさけるんだ。
ぶた肉は、とりやすいんだけどね!
29話目だから、お肉を登場させてみた。




