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9 闇鍋の儀
冬。十一月下旬。
『ちょっと早いが、「鍋」を食べよう』
仲間内で集まって、そういうことになった。
毎年恒例、「闇鍋を食す」という我らの儀式である。これをしないと年を越せない。昨年は大晦日に行った。
「各々、鍋に入れたい食材は持ってきたでござるか?」
自室。狭い部屋に男四人。
私が彼らに問うと、皆、満面の笑みを浮かべていた。果てしなく不安だ。
「勿論ですぞ、黒黒氏。最高の食材を持ってきたでござる」
これは…今日の鍋は荒れるぞ。
「では、白白氏から順に食材を鍋に入れていってくだされ」
そして、台所へ順々に席を立つ。
徐々に異臭を放ち始める鍋に、食卓で待つ者たちは恐怖した。
やがて、運命の時。
実食!
「ねちょねちょしている…」
「甘みの後に辛みが来て、最後に酸っぱさが舌を蹂躙してくるのだが!」
「もぐもぐ、これは…何の肉ですお?」
「マジレスすると、知らない方が幸せなんですぞ」
当然のごとく、闇鍋は混沌に包まれた。
具材? きちんと食べ切りましたよ。スタッフなんていなかった。
いなかったんです…。




