6・変な生き物
第一話の前書きを前提として読み進め下さい。
ぼくがちらと見た、窓の外。
そこにもう、日本はなかった。
ぐちゃぐちゃにされたコンクリートブロック。遠くの方に上がる煙。なぎ倒された常緑樹。亀裂がどこまでもどこまでも続いているアスファルト。上に広がる爽やかな空。
電柱も、電線も、高層ビルもなにもない澄んだ空。
あちらこちらであがる悲鳴。車のクラクション。子供の泣き声。 鳥の羽音。足音。銃声。
そして、
なんだ、あれは。
それは限りなく半透明で、限りなく不格好で、限りなく不気味な、、、、生き物?
倒れている馴染みの桜の木を基準にしてみると、きっとぼくの腰にも満たない身長だろう。
頭だけが変にデカく、ドライヤーみたいに、前の方がとがっていて、黒い丸と四角い穴が一つずつある。
頭部にはうす茶色の脳みそがうっすらと透けて見えている。
体の方も同じように、色々な器官が見え隠れしていた。
足はなく……いや、ある。前と後ろで、下半身のさらに半分が割れているみたいだ。それをもぞもぞと動かして擦り足のように進んでいるから、きっとあれが足。
そして、首なしのくびれと呼ぶには細すぎる所をなだらかに左右にくだり、そこに、レモン型のぶよぶよした物体がくっついていた。手だ。
そのうち片方が見る間にうねり、形を変え、筒型になっていった。
そのうち片方が見る間にうねり、形を変え、
人間の完璧な腕型になっていった。
手が身近なコンクリの破片をつかんでーーーーー
ぼくは窓の外に目をやった2,6秒の間にこれだけの情報をキャッチしたのだ。誉めてもらいたいね。
足を蹴られ、後ろに倒れ込む。机の足に頭を打って、目から火花が散ったさ。
と同時にパァン、と銃声が響く。すぐ側で聞くとこんなに大きな音なのか、と素で驚いた。
北澤が両手でオートマチックライフルを構え、狙いを定めては撃っている。連続して、撃つ。それにどれだけの集中力を必要とするだろうか。
北澤は体をくるりと半転させると、またコンクリの教室の柱に背中を預け、何もない天井を見上げた。
窓からは容赦なく、教室の床をへこませるほどの、金属やセメントの破片が撃ちこまれだしている。
ぼくに一瞥をくれると、また機関銃を構え、破片の大元を狙い撃ち出す。汗がしたたる。
なんとなく、艶っぽかった。
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