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第35話

『ライトニング!』


 一筋の雷撃がお嬢様から放たれる。


「あ~、駄目だダメ。全然なっちゃいない」


 でっぷりと油が乗ったおばちゃんに杖で小突かれています。

 なんでも王太子さんとの話で、王都に行く代わりに、腕のいい魔法の家庭教師を催促したらしい。

 そしたら来たのは、少々動きにくそうな体の壮年の女性だった。


「ほらセイジも」

「ウスッ。うむむむ、出ません」

「あんたは諦めが早すぎ」


 杖で小突かれるオレ。

 なぜかオレまで授業を受けてる状況。


「いいかい、魔法というのはね……」


 このおばさん話が長すぎ。あの王太子、何考えてこの人を寄越してきたのか。


「聞いてるのかい?」


 うすっ、寝てました。

 ゴツンと頭を小突かれる。その杖、結構痛いっすね。


「兄ちゃん、モンスターがいるぜ」


 フォルテが合図を送ってくる。

 本日はダンジョンにて講習を受けている。

 冒険者さんを2人ほど雇って、オレとフォルテ、シュマお嬢様と、この魔法使いのおばちゃんの5人で探索中だ。


『装填・ホローポイント!』


 ―――ゴツンッ!


 痛いっすよ。何で小突いてくるの?


「そんなちゃちな攻撃で何が出来るんだよ。ほら、ちょっとどきな」


 どうやらこのお方は魔法至上主義のようで、銃の様なちゃちな攻撃は魔法とは認めないんだと。


「ほら、さっき教えたとおりにやんな」


 そう言ってシュマお嬢様を押し出す。

 お嬢様はアワアワ言いながらも魔法を放つ。


『ライトニング!』


 お嬢様の魔法がウルフ型の魔物に直撃する。

 1体の魔物が倒れる。

 そこをすかさず2体の魔物が襲ってくる。


「あわわわ・」『ライトニング!』『ライトニング!』


 慌てて乱発するお嬢様。

 一発は当たり、もう一発ははずす。

 残った一匹は冒険者さんが始末する。


「威力は申し分ないが、状況判断が遅い! これはもっと実践をつんでいかないとダメだね」


 手厳しい総評です。


「あんなの兄ちゃんにかかればイチコロなのにな。魔石も消耗しないし」


 まあ、今回はお嬢様の教育の場ですから。

 とはいえ、オレもレベル上げたいんだがなぁ。こっそりたおすか?

 と、邪な考えを抱いていたのが悪かったのか、


「セイジっ!」

「兄ちゃん!」


 落とし穴に落ちてしまいました。

 つ~かあのおばはん、ニヤリと笑ってなかったか? もしかしてハメられた?

 いやいやいや、なんでオレがハメられるんだ……まてよ、あの王太子、オレがお嬢様に懐かれてるからって……

 か、考えすぎですよね?


『モデルチェンジ・ハナビ!』


 オレはチャッカマンに火をつけて辺りを見回す。

 そしたらヌウゥと骸骨さんが! 剣を振りかぶっていらっしゃるじゃありませんか!


「ひぃいい!」


『赤外線スコープ・ON!』『装填・焼夷弾!』


 骸骨さんの攻撃をかいくぐり地面に向けて一発焼夷弾。かつ、赤外線スコープで暗視モードにする。と。


「ひぃいいい!」


 いるわいるわ骸骨さん。どうやらスケルトン広場に落ちた模様。

 やべえ、骸骨って苦手なんだよな。なにせ弾が骨の間をすり抜ける。バキバキに壊さないと終わらない。

 動きは遅いので剣士か魔術師がいればイチコロなんだが。

 今のオレにはスライムに次ぐ天敵でしかない。


「たっけて~、誰か~、助けて!」


 オレは広場をひたすら逃げ回る。


『装填・劣化ウラン弾!』


 貫通弾をひたすらばらまく。しかしながら、やはり骨の間をすり抜けてる模様。

 うまく背骨とかに当たればいいが、世の中はそうそううまくできてやしない。超、当たりません。

 まだ水鉄砲の方が当たるんじゃねえか? ん、水鉄砲?


『モデルチェンジ・ミズデッポウ!』『装填・ポーション!』


 オレは水鉄砲に代えてポーション水を骸骨どもに振り掛ける。

 おっ、骸骨どもが逃げていくぞ。

 オラオラ! どうしたさっきまでの勢いわよぉ!


 オレのポーションがかかった骸骨さん、当たったとこが溶けていく。

 あいつらはアンデット、回復薬は苦手のようです。

 さっきまで散々追いかけられていたオレが、今は追いかける番だ!


「フハハハ! これならアンデットなど目でもないわぁあ!」


 などと調子にノッておりました。


 ……でけぇ。


 なんか奥の方で骸骨どもが踊り始めたので、なんだろな~って、ぼ~と見ていると、なんかでっかい骨が……

 あれってアレだろ、ほらよくゲームとかで見る、スケルトンドラゴン……

 あっ、これって、ぼ~と見てたらアカン奴だった!


 オレは急いで周りの骸骨どもにポーション水を注いで昇天させる。

 そしてドラゴンにもぶっかけたのだが。


 ……うん、表面はジュウジュウいっておりますな。ダメージになってる雰囲気はないけど。


 骨が分厚すぎて効いていない模様。

 ああ、なんか大口空けて光ってんな~。オレもうダメかも。

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